この記事の結論
中小企業がエンジニアを採用するときは、求人を出す前に「何を任せたいか」を決めるのが先です。社内SE、業務システム、ホームページ、AIの活用、パソコンやアカウントの管理は、それぞれ合う人が違います。求人票には法律で決まった労働条件を書き、うそや誤解を招く書き方をしません。大阪のハローワークでは、情報処理・通信技術者の有効求人倍率が職業全体より高く、兵庫では1倍を下回るなど、地域でも数字は違います。社内に技術を見られる人がいないときは、過去に作ったものの説明や、一緒に課題を解く面接で見極め、入社後は1人目のエンジニアが孤立しない仕組みと、会社名義のアカウントを用意します。採れないとき、待てないときは、外部の技術チーム、短期の委託、公的な人材支援の窓口という選択肢もあります。bundlyzeでは、大阪市北区のグラングリーン大阪を拠点に、大阪・兵庫を中心とした関西の会社からのご相談に対応していて、全国からオンラインでもご相談いただけます。
「エンジニアが1人ほしい」の中身を、先に分ける
「社内にエンジニアがほしい」という相談の中身は、会社によってかなり違います。求人を出す前に、任せたい仕事がどれに近いかを決めておくと、求人の書き方も、面接で見ることも決まります。
| 任せたい仕事 | 中身の例 | 合いやすい経験 |
|---|---|---|
| 社内SE・情シス | パソコンやスマホの用意、アカウントの発行と削除、社内のネットワーク、困ったときの窓口 | 社内のIT環境の管理、利用者への説明 |
| 業務システム | 受発注や在庫、顧客の管理の仕組みを作る、直す、外の会社に頼んだシステムを見張る | 業務システムの開発、データベース、要件の整理 |
| ホームページ・Web | 会社のサイトや採用ページの更新、問い合わせフォーム、計測 | Webの制作、サーバーやドメインの管理 |
| AIの活用 | 生成AIを今の業務やシステムにつなぐ、社内のルールを作る | システム開発に加えて、AIのサービスの使い方と情報の扱い |
| 外部の会社との窓口 | 発注、見積もりの読み方、作ったものの受け取りと確認 | 発注する側か、受ける側での開発の経験 |
1人にすべてを任せたくなりますが、全部を同じ深さでできる人は多くありません。いちばん困っている仕事を1つか2つに絞り、「入社して半年で、何ができていればよいか」を書き出します。たとえば「今の受発注の管理をExcelから仕組みに移す計画を立てる」のように、仕事の言葉で書いておくと、求人にも面接にも使えます。
業務システムで何を頼みたいかを書き出す方法は、要件定義とは。システム開発を頼む前に、発注する側が準備することにまとめています。採用する場合も、外に頼む場合も、この書き出しは同じように役に立ちます。
社内に1人雇うか、外部に任せるか、組み合わせるかの比べ方は、社内にAIも使えるエンジニアを1人雇うか、外部に任せるかに書いています。この記事では、採用すると決めたあとの進め方を中心に書きます。
求人票は、法律の決まりを押さえてから書く
募集のときに示す労働条件
職業安定法では、求人票や募集要項で示さなければならない労働条件が決まっています。2024年4月1日からは、「従事すべき業務の変更の範囲」「就業の場所の変更の範囲」「有期労働契約を更新する場合の基準(通算の契約期間や、更新の回数の上限を含む)」の3つが加わりました(厚生労働省:職業安定法施行規則改正(労働条件明示等))。
エンジニアの求人では、「業務の変更の範囲」が書きにくいところです。最初は社内SEとして入ってもらい、いずれ業務システムの開発も任せたいなら、その見込みも含めて会社が決めて書きます。
うそや誤解を招く書き方をしない
2022年10月1日に施行された改正職業安定法で、求人企業には、求人の情報と自社に関する情報を的確に表示する義務ができました。うその表示や誤解を生じさせる表示をしてはならず、募集を終えたり内容を変えたりしたら、自社の採用ウェブサイトなども速やかに直す必要があります(厚生労働省:職業安定法が改正され、労働者の募集ルールが変わります(求人企業向け、PDF))。
エンジニアの求人で気をつけたいのは、「最新の技術に触れられます」「自由に開発できます」のような書き方です。実際の仕事の多くが、パソコンの設定や問い合わせの対応なら、そのとおりに書きます。入社後に「聞いていた仕事と違う」となるのが、いちばん避けたいことです。
年齢と性別で絞らない
募集と採用は、原則として年齢にかかわりなく行い、性別にかかわりなく均等な機会を与えます。「20代のエンジニア募集」「若手歓迎」のように年齢を絞って読める書き方は、決められた例外に当たる場合を除いて使えません(厚生労働省:年齢制限の禁止についての質問と回答(PDF)、厚生労働省:男女雇用機会均等法のあらまし(PDF))。
求人の文章の確かめ方は、生成AIで求人票や採用ページの文章を作るとき、中小企業が確かめることに詳しく書いています。AIで下書きしない場合も、確かめる点は同じです。
Googleの求人検索に載せる場合
自社の採用ページに求人を載せるなら、求人の構造化データ(JobPosting)を書き添えると、Googleの求人検索に表示される対象になります。必ず書く項目は、求人を出した日、仕事の説明、採用する会社、勤務地、職種の名前の5つです。1つの求人を詳しく載せたページに書き、求人を並べた一覧のページには書きません。期限が切れた求人は、ページから外すか、締め切りの日を過ぎた状態にします(Google 検索セントラル:求人情報(JobPosting)の構造化データ)。採用ページの作り方は、採用サイトを作るなら。中小企業が応募を増やすために、先に決めることにまとめています。
大阪・兵庫の採用の数字を見る
求人を出す前に、公的な統計で、いまの状況を確かめておきます。ここでは、ハローワークを通した求人と求職の数を見ます。ハローワーク以外の経路での採用は含まれていない数字です。
大阪では、求人のほうが多い
大阪労働局の「職業別有効求人倍率表」(令和8年7月分)で、フルタイムの有効求人倍率は次のとおりでした(大阪労働局:職種別有効求人倍率及び求人求職賃金、令和8年7月分(PDF))。
| 職業(大阪労働局の区分) | フルタイムの有効求人倍率 |
|---|---|
| 職業計 | 1.01倍 |
| 情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発) | 1.58倍 |
| 情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発を除く) | 1.87倍 |
同じ資料の賃金の表では、フルタイムの「情報処理・通信技術者(ソフトウェア開発)」の求人に書かれた賃金は、下限が259,486円、上限が441,280円で、求職している人の希望賃金は290,447円でした。この表の数字では、求人の賃金の下限が、求職している人の希望賃金を下回っています。給与に幅を持たせる場合は、どんな経験や仕事の範囲なら幅のどこになるのかを書いておくと、応募する人が自分に当てはめて考えやすくなります。
兵庫では、求職している人のほうが多い
兵庫労働局の「労働市場月報ひょうご」(令和8年8月内容)の職業別職業紹介状況(常用計)では、「情報処理・通信技術者」の有効求人数は618人、有効求職者数は1,370人で、有効求人倍率は0.45倍でした。職業計は0.82倍です(兵庫労働局:職業紹介状況、令和8年8月内容(PDF))。
ハローワークを通した数では、兵庫では仕事を探している人のほうが多いということです。ただ、この数字からは、求職している人の経験や希望が、自社が任せたい仕事と合うかどうかまでは分かりません。大阪と兵庫では職業の分け方や集計の区分も違うので、2つの数字をそのまま比べることもできません。
全国では
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年8月分)では、全国のパートタイムを除く常用の求人で、「情報処理・通信技術者」の有効求人倍率は1.48倍、新規求人倍率は3.13倍でした。職業計は、有効求人倍率が1.17倍、新規求人倍率が2.06倍です(厚生労働省:一般職業紹介状況(令和8年8月分)参考統計表(PDF))。
また、IPA(情報処理推進機構)が2026年7月16日に公表したDX動向調査のポイントでは、DXを推進する人材の「量」が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業の合計が85.5%でした(IPA:国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント(PDF))。
職種ごとの賃金の統計や、給与のほかに会社が負担するものは、社内にAIも使えるエンジニアを1人雇うか、外部に任せるかで紹介しています。
社内に技術を見られる人がいないときの見極め方
中小企業で1人目のエンジニアを採るとき、いちばん困るのが、面接で技術を見られる人が社内にいないことです。履歴書に並んだ言葉が分からなくても、次のような方法で、仕事の進め方は見えてきます。
過去に作ったものを、技術を知らない人に説明してもらう
これまでに作ったシステムや、関わった仕事を1つ選んでもらい、「何のために作ったのか」「誰が使っていたのか」「どこが難しかったのか」を説明してもらいます。社内SEや1人目のエンジニアは、技術を知らない人に説明する場面が多い仕事です。専門用語を使わずに、相手に合わせて話せるかは、面接の場で確かめられます。
前の勤め先の情報は、話せない部分もあります。話せる範囲で構わないことを、先に伝えておきます。
自社の困りごとを、一緒に考えてもらう
実際に社内で困っていることを1つ、課題として出します。たとえば「毎月の請求書づくりに2日かかっている。どこから手を付けるか」のような題です。正解を答えてもらうことより、次の点を見ます。
- 最初に、業務の流れや困っている人のことを質問するか
- いきなり大きな仕組みを作る話をせず、小さく試す順番を考えるか
- 分からないことを、分からないと言えるか
- 既製のサービスで足りる場合に、それを勧められるか
課題は面接の場で一緒に考える程度にとどめ、長い時間がかかる作業を、応募した人に宿題として出すのは避けます。
外部の人に同席してもらう
技術の話の深さを確かめたい場合は、取引のある開発会社や、知り合いのエンジニアなど、社外の人に面接に同席してもらう方法もあります。同席してもらう場合は、応募した人に先に伝え、応募した人の情報をどこまで見せるかも決めておきます。
面接で聞いておきたいのは、「入社して最初の3か月で、何から始めますか」という質問です。今の仕組みを全部作り直す話から始める人より、まず今の業務と仕組みを調べ、困っている人に話を聞くところから始める人のほうが、1人目のエンジニアに向いていることが多いと私たちは考えています。
入社したあと、1人目のエンジニアを孤立させない
採用できたあとにも、決めておくことがあります。社内に同じ仕事の人がいない1人目のエンジニアは、相談できる相手がいないまま、仕事を抱え込みやすいからです。
相談の相手と、仕事を決める人を決める
- 仕事の優先順位を決める人を1人決める。あちこちの部署から直接頼まれると、どれから手を付けるかで迷う
- 社内の頼みごとは、1か所にまとめて受け付ける(共有の表や、決まったチャットの場所など)
- 技術のことを相談できる社外の相手(取引のある開発会社や、地域の勉強会など)を持てるようにする
書いて残すことを、仕事に含める
1人だけが仕組みを知っている状態は、その人が休んだり辞めたりしたときに止まります。次のことを書いて残すのを、仕事の一部として時間に含めます。
- どのシステムやサービスを、何に使っているかの一覧
- 設定を変えたときの記録と、その理由
- 困ったときに、誰に何を連絡するかの手順
アカウントと契約は、会社の名義にする
ドメイン、サーバーやクラウドのサービス、開発に使うサービスのアカウントは、エンジニア個人のメールアドレスではなく、会社のメールアドレスと会社の名義で作ります。支払いも会社のカードや請求書払いにします。管理者の権限は、エンジニアのほかに、社内のもう1人にも持たせておきます。
個人の名義で作られたアカウントは、その人が辞めたときに取り戻すのに手間がかかります。すでに外の会社や個人の名義になっているものを移す手順は、制作会社から、ドメインやアカウントを自社に移す手順にまとめています。
採用できなかったとき、待てないとき
求人を出しても応募が来ない、合う人が見つからない、採用を待っている間に業務が止まってしまう。そういうときの選択肢もあります。
外部の技術チームに頼む
業務システムの開発や保守、AIの組み込みを、外部の技術チームに頼む方法です。外部に頼むと、採用や教育、社会保険などの固定的な負担を持たずに、必要な作業の分だけ頼める場合があります。一方で、頼む作業が多く長く続くなら、社内で雇うほうが合うこともあります。どちらが自社に合うかは、任せたい仕事の量と続く期間で変わります。
外部の技術チームは、いくつもの会社や現場で仕事をしています。そのため、設計の型、AIの使い方、つまずきやすい点といった、複数の現場で得たノウハウを共有してもらえることがあります。頼むときに、手順書や設定の説明などのドキュメントを残してもらうこと、社内の窓口役の人へ引き継いでもらうことを、仕事の中身に入れておくと、そのノウハウが社内にも残ります。のちに社内でエンジニアを採るときにも、その資料が入社した人の土台になります。
外部に任せるときは、社内に1人、窓口役を決めておきます。窓口役はエンジニアでなくても構いません。業務のことが分かり、外部の技術チームに何を頼むかを決められる人です。
短い期間だけ、決まった作業を頼む
「今のシステムの状態を調べて、直すところの一覧を作る」「採用ページと応募フォームを整える」のように、範囲を決めて短い期間だけ頼む方法もあります。いきなり長い契約を結ぶより、小さな仕事で相手との相性を確かめられます。作った会社と連絡が取れなくなったシステムを抱えている場合は、システムを作った会社と連絡が取れない。業務システムを引き継ぐ手順も参考にしてください。
公的な窓口で、採用の進め方を相談する
大阪・兵庫には、中小企業の人材の確保を支える公的な窓口があります。どの窓口も、エンジニアの採用だけを扱う場所ではありませんが、誰をどう採るかを整理するのに使えます(どれも2026年10月3日に確認した内容です)。
| 相談先 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| OSAKAしごとフィールド 中小企業人材支援センター(大阪) | 人材確保の課題の見える化、専任のアドバイザーによる採用と定着の相談、セミナー、求職者と出会う機会を設けている。企業向けの案内に「無料でサポートします」と書かれている | OSAKAしごとフィールド:企業の方へ |
| 中核人材雇用戦略デスク(大阪) | 上のセンターの中にあり、府内の中堅・中小企業の経営課題の解決に必要な人材のニーズを掘り起こし、人材紹介会社などと連携して確保を手伝う。副業・兼業の促進も含めて機能を広げていると説明している | 大阪府:中核人材雇用戦略デスクについて |
| ひょうご専門人材相談センター(兵庫) | 公益財団法人ひょうご産業活性化センターが開設。中小企業の成長に必要な専門人材の採用を支えるため、相談と人材ニーズの掘り起こしを受け付けていて、県内全域の中小企業にマネージャーが訪問すると案内している | ひょうご専門人材相談センター |
ハローワークに求人を出すことも、もちろんできます。上で見たとおり、兵庫のハローワークでは、情報処理・通信技術者の仕事を探している人のほうが多い数字が出ています。
大阪市・神戸市など、Webやシステムについて市ごとに使える窓口は、大阪・兵庫・関西で、Webやシステムを頼む前に相談できる公的な窓口(地域別のまとめ)に載せています。
私たちが手伝えること
最後に、私たちbundlyzeについても書いておきます。私たちは、エンジニアを採用できなかった会社や、採用を待てない会社の外部の技術チームとして、業務システムの開発、今の業務へのAIの組み込み、作ったあとの保守を引き受けています。この記事を書いている技術責任者の津嘉山は、業務システム開発とAWSを専門とするエンジニアです。
引き受けるときは、手順書や設定の説明を残し、アカウントや契約を会社の名義にすることを、最初に決めます。のちに社内でエンジニアを採ることになったときに、入社した人へそのまま引き継げるようにするためです。
エンジニアを採りたい会社には、求人を載せる採用ページづくりもお手伝いできます。任せたい仕事の書き出しから、求人ごとのページ、求人の構造化データ、応募フォームまで、技術の分かる立場から一緒に考えられます。進め方は、採用サイト・採用ページ制作のサービスとシステム開発のサービスにまとめています。
外部に頼むほうが、いつも安く済むわけではありません。頼む作業の量や期間によっては、社内で雇うほうが合うこともあります。そのときは、そうお伝えします。
よくある質問
社内SEの求人には、何を書けばいいですか?
面接で技術力を見られる人がいません。どうすればいいですか?
1人目のエンジニアが辞めたら、どうなりますか?
採用できるまでの間だけ、外部に頼むことはできますか?
まず、任せたい仕事を1枚に書き出す
エンジニアの採用がうまくいかない理由の多くは、求人を出す前に「何を任せたいか」が決まっていないことです。任せたい仕事が決まれば、求人に書くこと、面接で聞くこと、採れなかったときに外に頼むことも決まります。
まずは、いま社内で困っているITの仕事を書き出し、入社して半年でできていてほしいことに印を付けてみてください。その1枚が、求人票の下書きにも、外部に相談するときの資料にもなります。
ご相談
ホームページやLPについて、いまの状況をお聞かせください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。
