この記事の結論
業務システムを直し、データを整え、AIを業務に組み込める専門のエンジニアが社内に1人いると、相談がすぐに形になります。ただ、こうした職種の賃金は高めで、求人も多く、採用は簡単ではありません。1人にすべてを任せると、休みや退職のときに仕組みが止まるおそれもあります。選び方は「雇うか、外に頼むか」の二択ではありません。目的の決定、判断、データとアカウントの持ち主は社内に残し、作る作業と技術の見張りをどこまで社内で持つかを決めます。社内に窓口役を1人置き、外部の技術チームと組む形もあります。bundlyzeでは、大阪市北区のグラングリーン大阪を拠点に、大阪・兵庫を中心とした関西の会社からのご相談に対応していて、全国からオンラインでもご相談いただけます。
「AIも使えるエンジニアが1人いれば」と考えたとき
生成AIを業務に使いたい、Excelの手作業を減らしたい、古くなったシステムを直したい。こうした相談が社内で重なると、「技術が分かる人が社内に1人いれば」と考えるのは自然なことです。外に頼むたびに説明し直す手間がなく、思いついたことをすぐに試せるからです。
一方で、エンジニアは人件費が高い傾向があり、優秀な人ほど採用も難しくなります。それなら、外部にまるごと任せる選択肢もあります。この記事では、雇う場合と外部に任せる場合の両方を、公的な統計と契約の考え方をもとに並べます。どちらが正しいという話ではなく、自社にはどちらが合うかを決めるための材料です。
社内のエンジニアが、実際に担う仕事
中小企業で「AIも使えるエンジニア」を1人置くと、その人に集まる仕事は、たいてい次の5つにまたがります。
| 仕事 | 中身の例 |
|---|---|
| 業務システム | 受注や在庫、顧客の管理の仕組みを作る、直す、使い方を説明する |
| データの整理 | 表計算や紙に散らばったデータをそろえ、集計や検索ができる形にする |
| AIの組み込み | 生成AIのサービスを、今の業務やシステムとつなぐ。入力してよい情報を決める |
| セキュリティ | アカウントと権限の管理、更新の適用、バックアップ、問題が起きたときの初動 |
| 外部の会社とのやりとり | 使っているサービスやシステム会社との契約、見積もりの読み解き、問い合わせ |
この5つを1人で深くこなせる人は、多くありません。システムを作るのが得意な人がセキュリティの運用に詳しいとは限らず、AIに詳しい人が業務システムの保守に慣れているとも限りません。
もう1つ気をつけたいのが、1人に任せきることです。その人が休んでいる間にシステムが止まると、誰も直せません。退職すると、どこに何があるのか、どのアカウントで何を契約しているのかが分からなくなります。作った会社と連絡が取れなくなったときと同じことが、社内でも起こります。そうなったときの手順は、システムを作った会社と連絡が取れないときの引き継ぎ手順にまとめています。
雇う前に知っておきたい、採用の現状
賃金は、職種と会社の規模で差がある
厚生労働省の「令和7年賃金構造基本統計調査」では、情報処理の職種の賃金が公表されています。10人以上の会社で働く人(男女計)の平均は、次のとおりです(e-Stat:令和7年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 第1表、2026年3月24日公開)。
| 職種(統計の分類) | 平均年齢 | 毎月決まって支払われる給与 | 前の年の賞与など |
|---|---|---|---|
| システムコンサルタント・設計者 | 38.3歳 | 54.2万円 | 238.5万円 |
| ソフトウェア作成者 | 37.1歳 | 39.1万円 | 109.5万円 |
毎月の給与には、残業代などの手当も含まれます。目安として、毎月の給与の12か月分に賞与などを足すと、システムコンサルタント・設計者で約889万円、ソフトウェア作成者で約578万円になります。
同じ表で、会社の規模ごとにも分かれています。システムコンサルタント・設計者の毎月の給与は、1,000人以上の会社で58.9万円、10人から99人の会社で38.4万円でした。設計や提案まで担う職種のほうが高く、規模の大きい会社ほど高い傾向があります。業務の整理からAIの組み込みまで任せたい人を探すと、規模の大きい会社と同じ人を取り合うことになりやすい、ということです。
なお、これは今その職種で働いている人の平均で、採用するときに出すべき金額を示すものではありません。経験や担う範囲によって、人ごとの差も大きくなります。
給与のほかにも、会社が負担するものがある
人を雇うと、給与のほかにも会社の負担があります。たとえば厚生年金保険料は、給与と賞与に18.3%の保険料率をかけて計算し、会社と本人が半分ずつ負担します(日本年金機構:厚生年金保険の保険料)。ほかにも健康保険や雇用保険などの会社負担があり、率は加入先や業種によって変わります。採用にかかる費用、パソコンや開発に使うサービスの費用、学び続けるための時間も見込んでおく必要があります。
求人は、全体より多い
厚生労働省の一般職業紹介状況(令和8年8月分)では、ハローワークでの職業別の有効求人倍率が公表されています。パートタイムを除く常用の求人で見ると、「情報処理・通信技術者」は1.48倍で、職業全体の1.17倍を上回っていました(厚生労働省:一般職業紹介状況(令和8年8月分)参考統計表(PDF))。求職者1人に対して、求人が1.48件ある状態です。ハローワークを通した求人と求職だけの数字なので、ほかの採用の経路は含まれていません。
人材が足りないと感じている会社は多い
IPA(情報処理推進機構)が2026年7月16日に公表した国内企業のDX動向調査(2025年度調査)のポイントでは、DXを推進する人材の「量」が「やや不足している」「大幅に不足している」と答えた企業の合計が85.5%でした。AIを導入している割合は、従業員101人以下の企業で16.6%でした(IPA:国内企業のDX動向・AI活用動向のポイント(PDF))。同じ資料では、自社へのAI導入を進められる従業員や、データの管理が分かる人材についても、不足しているという回答の割合が高いままだとしています。
外部に任せるときに、社内に残すこと
外部の会社に任せる場合も、すべてを渡すことはできません。次の4つは、どの形で頼んでも社内に残ります。
- 目的:何のために作るのか、何が変われば成功なのかを決める
- 判断:作る範囲、優先順位、使い始めるかどうかを決める
- データの持ち主:業務のデータを、どこに置き、誰が見られるかを決める
- アカウントの名義:サーバー、ドメイン、AIのサービスなどの契約を、自社の名義で持つ
IPAの資料でも、企画の段階で業務の要件を主体的に決めるのは発注する側だと説明されています(IPA:「情報システム・モデル取引・契約書」から読み解く(PDF))。発注する側が準備することは、要件定義とは。システム開発を頼む前に、発注する側が準備することにまとめています。
契約の形は、準委任と請負に分かれる
IPAのモデル契約では、仕事の段階ごとに、契約の形を分けて考えます。同じ資料では、次のように整理されています。
| 段階 | 主な契約の形 |
|---|---|
| 企画、要件定義 | 準委任 |
| 設計の一部、プログラミング、テストの一部 | 請負 |
| 受け入れと導入の支援、運用テスト | 準委任 |
| 運用、保守 | 準委任または請負 |
請負は、決まった成果物を完成させることに対価を払う形です。準委任は、専門家として注意を払って業務を進めること自体に対価を払う形で、作るものを少しずつ決めながら進める開発に向くと、同じ資料は説明しています。AIの組み込みのように、試しながら形を決める仕事は、準委任で進めることが多くなります。
ただ、準委任だからといって、社内の人が外部の技術者に毎日細かく指示を出してよいわけではありません。同じ資料は、指示の出し方によっては偽装請負になるおそれがあると議論されてきたことと、厚生労働省の疑義応答集が、両者が対等な関係で協働し、受注した側の担当者が自律的に判断している実態があれば偽装請負とは判断されない、としていることを紹介しています。社内のメンバーと同じように使いたいなら、それは契約の形から考え直す必要があります。
保守を頼むときの契約の中身は、システムの保守契約で確かめることで詳しく書いています。
複数の現場で得た知見を、社内に残してもらう
外部の技術チームに任せる利点の1つは、いくつもの会社の仕事で得た知見を共有してもらえる場合があることです。たとえば、業務システムの設計の型、業務の中でのAIの使い方、つまずきやすい点などです。社内の1人のエンジニアが、自社の仕事だけでこうした経験を積むには時間がかかります。
ただ、これはどの依頼先でも必ず得られるものではなく、相手と頼み方によります。知見を社内に残すために、次のことを頼んでおきます。
- 作ったものや決めたことを、社内向けに説明する場を設けてもらう
- 設定の変え方やAIの使い方を、手順書にしてもらう
- 設計の理由や、選ばなかった方法とその理由を、ドキュメントに残してもらう
- 社内の窓口役に、少しずつ作業を引き継いでもらう
外部に任せるほうが安く済むとは限りません。費用だけでなく、何が社内に残るかも合わせて比べてください。
丸投げで中身が分からなくなるのを防ぐ
外部に任せたときにいちばん困るのは、何がどう動いているのか、社内の誰も分からなくなることです。次のものを、契約の段階で「納めるもの」に入れておきます。
- システムの構成と、使っているサービスの一覧
- 設定と更新の手順、問題が起きたときの連絡先と初動
- データの置き場所と、バックアップから戻す手順
- AIに入力してよい情報と、出力を誰が確かめるかの決まり
- 外部の会社が替わるときの引き継ぎの範囲
これは、社内でエンジニアを雇う場合も同じです。誰が作っても、ほかの人が引き継げる形で残すことが、1人に頼りきらないための条件です。
雇う、外部に任せる、組み合わせる
ここまでの内容を、3つの形に分けて並べます。
| 形 | 合う場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 雇う方が合う | 自社のシステムやデータを毎日のように直す仕事がある。技術そのものが商品や競争力に関わる。採用と育成に時間をかけられる | 1人に任せきらない。手順と設定を残し、休みや退職のときの代わりを決めておく |
| 外部に任せる方が合う | 作る仕事が数か月ごとの波で、毎日はない。業務システム、AI、セキュリティと、幅広い技術が要る。ほかの現場で得た知見も取り入れたい。まず小さく試したい | 目的、判断、データとアカウントの持ち主は手放さない。手順書と引き継ぎを納めるものに入れる |
| 組み合わせる | 社内に業務をよく知る人がいて、技術を学ぶ意欲がある。いずれは社内で回せる部分を増やしたい | 窓口役の時間を、通常の仕事とは別に確保する。外部に任せる範囲と、社内で持つ範囲を決めておく |
組み合わせるなら、窓口役を1人決める
組み合わせる形では、社内に技術の窓口役を1人決め、外部の技術チームと組みます。窓口役は、エンジニアである必要はありません。業務をよく知っていて、何に困っているかを言葉にでき、外部の提案を社内で判断にかけられる人が向いています。
窓口役が、外部の会社と一緒に仕組みを作る中で、設定の変え方や、AIへの指示の書き方を少しずつ覚えていけば、社内で回せることが増えていきます。最初から全部を身につける必要はありません。社内でAIを使える人を増やす順番は、生成AIの社内研修は、何から教えるかが参考になります。
採用を進めると決めた場合は、仕事の範囲と、1人に任せきらない体制を、求人の段階で示しておくと、応募する側も働き方を想像しやすくなります。求人ページで先に決めておくことは、採用サイトを作るなら。中小企業が応募を増やすために、先に決めることにまとめています。エンジニアの求人の書き方や、技術が分かる人がいない会社の面接の工夫は中小企業がエンジニアを採用する前に決めることで詳しく扱っています。
雇うか外部に任せるかを決める前に、「この1年で、技術の仕事がどれくらいあるか」を書き出してみてください。毎週ある仕事と、年に数回ある仕事に分けると、社内で持つべき範囲と、外に頼めば足りる範囲が見えてきます。そのうえで、目的、判断、データとアカウントの持ち主だけは、どの形でも社内に残します。
外部の技術チームを探すときに聞くこと
外部の会社を比べるときは、次の質問をしておくと、丸投げになりにくい相手かどうかが分かります。
- 作ったものの構成や手順は、どんな形で残りますか
- アカウントやデータは、私たちの名義で持てますか
- 担当の方が休んだときや、体制が変わったときは、どうなりますか
- 社内の担当者が、少しずつ自分で直せるようになる手伝いはしてもらえますか
- 私たちの場合、社内で人を雇ったほうが合う部分はありますか
最後の質問に、「この部分は社内で持ったほうがいいです」と答えられる会社は、自社の体制を一緒に考えてくれる相手です。AIの導入を頼む先の種類ごとの比べ方は、AI導入の依頼先の選び方にまとめています。
私たちが引き受けられることと、限り
最後に、私たちbundlyzeについても書いておきます。bundlyzeは少人数のチームで、開発は技術責任者の津嘉山が中心になって設計から関わります。そのため、大人数を一度に必要とする進め方には向いていません。
引き受けられるのは、外部の技術チームとして、業務システムの開発と改修、AIの業務への組み込み、作った後の保守です。社内に窓口役の方がいる場合は、その方と一緒に進め、構成や手順を社内に残し、社内で回せる部分を少しずつ増やすお手伝いもします。この記事を書いている技術責任者の津嘉山は、業務システム開発とAWSを専門とするエンジニアです。
社内で人を雇ったほうが合うと考えたときは、そうお伝えします。進め方は、AI導入支援・業務効率化のサービスと、業務システム開発のサービスにまとめています。
よくある質問
エンジニアを1人雇えば、AIの導入もシステムの保守も任せられますか?
外部に任せると、社内に何も残らないのではないですか?
準委任と請負は、どちらで頼むのがいいですか?
社内に技術が分かる人がいなくても、外部に頼めますか?
二択ではなく、社内で持つ範囲を決める
AIも使えるエンジニアを雇うか、外部に任せるかは、どちらか一方を選ぶ話に見えます。実際には、社内で持つ範囲と外に頼む範囲を、仕事ごとに分けて決めることです。目的、判断、データとアカウントの持ち主を社内に残し、1人に頼りきらない形で残しておけば、雇っても、外に頼んでも、組み合わせても、仕組みは止まりにくくなります。
まずは、この1年で技術の仕事がどれくらいあるかを、毎週ある仕事と年に数回の仕事に分けて書き出してみてください。それが、どの形を選ぶかを決める手がかりになります。
ご相談
AIの活用について、いまの状況をお聞かせください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。