この記事の結論
保守契約で確かめるのは、「どこまでが保守か」「どれくらいで対応するか」「何を報告してもらえるか」「契約が終わったら何を受け取れるか」の4つです。特に、機能を足す作業が保守に入るのか、別の費用になるのかは、後で行き違いが起きやすいところです。契約書の言葉ではなく、具体的な場面に当てはめて確かめます。
保守契約は「何かあったら直す」ではない
業務システムを作ったあと、多くの場合は保守契約を結びます。そのとき、「何かあったら直してもらえる」という理解のまま結んでしまうことがあります。
実際には、保守に何が含まれるかは契約ごとに違います。IPA(情報処理推進機構)のモデル契約書(第二版)でも、保守・運用は、作る段階とは別に、内容を決めて契約するものとして扱われています。受託で開発したシステム向けの「受託開発(一部企画を含む)、保守運用」と、パッケージやSaaSを使う場合の「パッケージ、SaaS/ASP活用、保守・運用」の2つの型があり、どちらも2025年4月にファイルが更新されています(IPA:情報システム・モデル取引・契約書(第二版)、2026-10-02 確認)。
確かめる1:どこまでが保守か
一番行き違いが起きやすいのが、範囲です。次の場面が、保守に入るのか、別の費用になるのかを確かめます。
| 場面 | 確かめること |
|---|---|
| 不具合を直す | 作った時点からある不具合か、あとから起きたものかで扱いが変わるか |
| 動かしている環境の更新 | サーバーやクラウド、使っている部品の更新に合わせた手直しは入るか |
| 小さな変更 | 画面の文言や項目の追加など、小さな変更は入るか。どこからが「機能の追加」か |
| 使い方の質問 | 操作の問い合わせに答えてもらえるか |
| データの修正 | 誤って入力したデータを直してもらえるか |
「小さな変更」と「機能の追加」の境目は、契約書の言葉だけでは分かりにくいところです。実際にありそうな変更を2〜3個挙げて、どちらに入るかを先に聞いておくと、行き違いを防げます。
環境の更新は、見落とされやすい作業です。私たち自身も、自社のドメインの証明書の更新を人の手に頼っていたところを、自動で更新される仕組みに移しました(SSL証明書の期限切れを防ぐ。自動で更新される仕組みへの移し方)。保守契約では、こうした更新を誰が見るのかも決めておきます。

確かめる2:どれくらいで対応するか
システムが止まったとき、どれくらいで対応してもらえるかも確かめます。
- 連絡の受付時間。 平日の日中だけか、夜間や休日も受け付けるか
- 最初の返事までの時間。 連絡してから、どれくらいで返事があるか
- 止まったときの優先度。 業務が止まる不具合と、見た目の不具合で、対応の早さを分けているか
業務が止まると困るシステムなら、「止まったときにどうするか」を契約の前に決めておきます。夜間や休日の対応が必要かどうかは、業務の都合で決まります。
あわせて、直したあとに何を確かめてから戻すかも聞いておきます。急いで直した変更が、別の画面を壊すことがあるためです。私たちは自社のサイトでも、本番に出す前に、手元で表示とフォームの動き・改行を自動で点検してから公開しています。保守でも、更新のたびに通す点検が決まっているかを確かめます。
確かめる3:何を報告してもらえるか
保守の作業は、発注する側から見えにくいものです。毎月、何を報告してもらえるかを決めておきます。
- 対応した問い合わせと、直した不具合
- 環境の更新や、安全のための手直しをしたか
- 気になっていること(動きが遅くなっている、容量が増えている、など)
報告があると、保守の費用に見合った作業がされているかを確かめられます。次の予算を考える材料にもなります。
確かめる4:契約が終わったら何を受け取れるか
保守契約は、いつか終わることがあります。作った会社が事業をやめることもあります。そのときに、次の会社や自社で引き継げるかどうかは、契約の時点で決まります。
- ソースコード。 最新のものを受け取れるか。権利はどうなっているか
- 設計書・手順書。 環境の作り方や、更新の手順が残っているか
- ログインと鍵。 サーバーやクラウド、外部のサービスのログインを、自社で持てるか。受け取るときは、メールやチャットの本文に書いてもらわず、決まった保管場所で受け渡す方法を決めておく
- 引き継ぎの協力。 契約が終わるとき、次の会社への説明に協力してもらえるか
私たちは、パスワードや鍵をソースコードやチャットに書かず、決まった保管場所にだけ置く決まりにしています。どこに何があるかが決まっていれば、引き継ぐときに探し回らずに済みます。
作った会社と連絡が取れなくなったときの手順は、システムを作った会社と連絡が取れない。業務システムを引き継ぐ手順にまとめています。
サーバーやクラウドの契約と支払いが、作った会社の名義になっていることがあります。保守契約とは別に、動かしている環境の持ち主が誰かも確かめておきます。
見積もりを比べるときは、中身をそろえる
保守の費用を複数の会社で比べるときは、金額だけでなく、上の4つの中身をそろえて比べます。月々の費用が安くても、小さな変更が別の費用になるなら、1年で見ると高くつくこともあります。見積もりの読み方は、業務システムの見積もりの読み方。金額を比べる前に確かめることにまとめています。
よくある質問
保守契約は、必ず結ばないといけませんか?
保守の費用は、何によって変わりますか?
今の保守契約の内容が分かりません。どうすればいいですか?
具体的な場面に当てはめて読む
保守契約の言葉は、どうしても抽象的になります。「この画面の項目を1つ増やしたい」「夜にシステムが止まった」のような、実際にありそうな場面に当てはめて、契約書を読んでみてください。
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