この記事の結論
自作のAIアプリが試作でうまく動くのは、作った本人が、試しのデータで、自分のアカウントから使っているからです。
社内のほかの人が毎日の業務で使うには、5つを足します。
だれが使えて何を見られるか(ログインと
試作を育てるか作り直すかは、データの置き場所を自社で決められるかと、ほかの人が使う画面が要るかで決めます。
試作を毎日の業務で使える形にする相談は、AI導入支援・業務効率化で受けています。
試作が動いたことと、業務で使えることは違う
ChatGPTのGPTsやノーコードの道具で、注文書を読んで表にするアプリや、問い合わせに返信の下書きをつけるアプリを作ってみた。
自分で何十回か試すと、思った以上にうまく動く。
次は「これを
その前に確かめたいのは、試作がうまく動いた条件です。
作った本人が、試しのデータで、自分のアカウントから使っている。
業務で使うと、これが全部変わります。
使う人は複数になり、データは本物になり、アカウントは会社のものになります。
| 見るところ | 試作のとき | 業務で使うとき |
|---|---|---|
| 使う人 | 作った本人だけ | 部署のみんな。辞めた人や外部の人が使えないようにする |
| データ | 試しの数件、名前を消したもの | 本物の顧客や取引のデータが毎日入る |
| アカウントと契約 | 作った人の個人のアカウント | 会社の名義の契約。担当が替わっても続く |
| 間違えたとき | 作った本人が気づいて直す | 気づかない人が、そのまま次の作業に使うおそれがある |
| 止まったとき | また今度にする | 業務が止まる。代わりの手順が要る |
1. だれが使えて、何を見られるかを決める
最初に足すのは、ログインと権限です。
試作は「URLを
IPA(情報処理推進機構)の
ログインしなくても使えてしまう作りや、ログインさえすればほかの部署やほかのお客様の記録まで見えてしまう作りが、これに含まれます。
決めるのは、使う人の一覧と、それぞれが見てよい範囲です。
営業は自分の担当の取引先だけ、経理は全部、外部の協力会社は自分が入れたものだけ、のように書き出してください。
人が辞めたときに使えなくする手順も、このとき一緒に決めます。
2. 入力と結果を、どこに置いて何日残すかを決める
次は、データの置き場所です。
ノーコードの道具やAIのサービスで作った試作は、入力も結果も、その道具を提供する会社の環境に保存されていることがあります。
どの国のどこに、何日残るのかを、作った本人も知らないことがあります。
個人情報を扱うなら、ここは社内で決めないといけません。
個人情報保護委員会は、生成AIのサービスに個人情報を含む指示を入れる事業者に、特定した利用目的を達成するために必要な範囲内かを確かめることと、提供者がその個人データを機械学習に使わないことなどを確かめることを求めています(個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等、2023年6月2日公表、2026年10月15日確認)。
ここからは私の考えですが、試作を業務に移すときは、入力と結果を保存する場所(自社の
試作のまま使い続けると、どれも「道具の
3. AIに外の文書を読ませるなら、紛れ込んだ指示に従わない作りにする
お客様からのメールや、取引先から届いたファイル、ウェブのページをAIに読ませるアプリでは、もう1つ備えが要ります。
読ませた文書の中に、AIへの指示が書き込まれている場合です。
OWASP GenAI Security Project の「LLMアプリケーションの
対策には、AIに渡す権限を用途に要る分だけに絞ること、つなぐ先の鍵はAIに渡さずプログラムの側で持つこと、影響の大きい操作の前には人の承認を挟むことを挙げ、確実に防げる方法があるかはまだはっきりしないとしています(OWASP GenAI Security Project:LLM01:2025 Prompt Injection、2026年10月15日確認)。
試作では、AIにメールの送信や表の書き換えまで任せていることがあります。
業務で使う形にするときは、AIには下書きと読み取りまでをさせ、送る・消す・登録するの操作は、人が確かめてから押す形に分けます。
4. 止まったとき、間違えたときの動きを決める
AIのサービスも、つなぐ先のシステムも、止まることがあります。
AIは同じ入力でも毎回同じ答えを返すとは限らず、間違えることもあります。
業務で使うなら、次の2つを決めておきます。
止まったときは、待ち時間の上限を決めて、
間違えたときに備えて、AIの結果は下書きとして出し、人が確かめてから登録する。
金額、在庫、お客様への返信のように影響の大きい結果は、人の確認を外さない前提にします。
あわせて、だれが、いつ、何を入れ、AIが何を返し、だれが確かめたかを記録に残します。
間違いが見つかったとき、どこから直せばよいかがこの記録で分かります。
5. AIの契約、アプリの名義、直す人を決める
最後は名義です。
試作は、作った人の個人のアカウントで、個人のクレジットカードでAIのサービスを契約していることがあります。
その人が異動したり辞めたりすると、アプリごと使えなくなります。
業務で使うなら、AIのサービスの契約、アプリを置くクラウドやノーコードの道具の契約、つなぐ先の鍵を、会社の名義に移します。
そのうえで、アプリを直す人を決めます。
社内のだれかが続けて直せるならその人、難しければ外部に保守を頼みます。
外部に頼む場合も、契約と鍵は会社の名義のままにしておくと、頼む先を替えるときに困りません。
保守の契約で確かめることは、システムの保守契約で確かめることに書きました。
私たちが、自社の診断の道具を公開するときに足したもの
私たちも、このサイトで、AI検索に読み取られやすい作りかを採点するLLMO簡易診断という道具を、2026年10月8日に公開しました。
入力されたURLのページを取りに行き、決まった基準で点数をつけて返す道具です。
公開する前に足したのは、点数をつける部分とは別のことでした。
だれでもURLを入れられる道具は、社内のネットワークの中など、取りに行ってはいけない先を指定される心配があります。
そこで、取りに行く先を確かめてから接続し、社内向けのアドレスには接続しない作りにしました。
1回に待つ時間と、取りに行くページの大きさにも上限を設けています。
同じところから短い時間に何度も使われないよう、10分に5回までに絞りました。
返すのは点数と、まず直したい項目だけで、取りに行ったページの本文は返しません。
外部のサービスの鍵は、プログラムの中には書かず、クラウドの秘密情報の保管場所から読む形にしています。
どれも、作った本人が試すだけなら要らないものです。
ほかの人が使う前提になったときに初めて要るものだと、私は考えています。
試作を育てるか、作り直すか
試作に5つを足して育てるか、試作は見本にして作り直すかは、次の2つで決めています。
1つ目は、データの置き場所と残す期間を、自社で決められるかどうかです。
使っているノーコードの道具やAIのサービスが、会社の名義での契約、学習に使わない設定、保存の場所と期間の指定に対応していれば、育てられます。
対応していなければ、置き場所を自社で決められる形に作り直します。
2つ目は、ほかの人が使う画面が要るかどうかです。
使うのが少人数で、全員がAIのサービスの画面に慣れているなら、使い方の手順をそろえるだけで足りることもあります。
決まった画面に入れて結果を確かめるだけにしたい、権限を細かく分けたい、今の業務システムに結果を書き込みたい、となれば、AIのAPIを使ったシステムとして作り直したほうが、結果的に早く済むことが多いと私は考えています。
作り直す場合も、試作は無駄になりません。
どんな入力に、どんな結果が欲しいかが、試作の中にもう書かれているからです。
試作で使った指示の文と、うまくいった例・うまくいかなかった例を残しておいてください。
生成AIを業務システムに組み込む開発を外に頼むときに渡すものは、生成AIのシステム開発を外注する前ににまとめています。
よくある質問
ChatGPTのGPTsで作ったアプリを、社内のみんなで使っても大丈夫ですか?
ノーコードで作った試作は、本番では作り直す必要がありますか?
AIにメールやファイルを読ませるアプリで、気をつけることは何ですか?
AIが間違えたときに備えて、何を決めておけばいいですか?
自作のアプリを、外部の会社に保守してもらえますか?
bundlyzeは大阪市北区のグラングリーン大阪を拠点に、業務システムの受託開発とAI導入支援をしています。
全国からご相談いただけます。
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この記事を書いた津嘉山は、業務システム開発とAWSを専門とするエンジニアで、自社のサイトの道具や集計の仕組みも自分で作り、公開して運用しています。
手元に試作があるなら、使う人の一覧と、AIのサービスの契約がだれの名義になっているかを、まず確かめておくと話が早く進みます。
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