この記事の結論
ホームページにAIのチャットを置くと、営業時間の外でも質問に答えられます。ただし、お客様から見れば、チャットの答えも会社の案内です。入れる前に決めるのは、よくある質問のページで足りないか、AIに答えさせる範囲と答えさせない範囲、読ませる資料、間違えたときの考え方と確かめ方、人への引き継ぎ(問い合わせフォームと電話)、個人情報の扱いとAIであることの表示、役に立っているかの測り方、の7つです。答えが決まっている質問が中心なら、まずよくある質問のページを整えるほうが確実です。
AIのチャットは、何が得意で、何が苦手か
ホームページの右下に出てくる会話の窓で、お客様の質問に答える仕組みをチャットボットと呼びます。以前は、決めておいた質問と答えの組から選んで返す形が中心でしたが、今は生成AIが、読ませた資料をもとに答えの文章を組み立てる形が増えています。
生成AIのチャットは、言い回しが違う質問にも答えられます。「駐車場はありますか」「車で行けますか」のように、同じことを違う言葉で聞かれても、読ませた資料に答えがあれば、それを探して返せます。一方で、資料にないことを、もっともらしく答えてしまうことがあります。
| 向いている質問 | 向いていない質問 |
|---|---|
| 営業時間、場所、アクセス、対応している地域 | その人の事情によって答えが変わる質問(「自分の場合はいくらか」) |
| サービスの内容、申し込みの流れ、用意するもの | 契約、返金、保証など、会社としての約束になる質問 |
| どのページに何が書いてあるかの案内 | 苦情、トラブル、急ぎの連絡 |
| 問い合わせ前の、ちょっとした確認 | 健康、お金、法律など、間違えたときの影響が大きい質問 |
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIを業務で使う事業者に、AIの出力について精度とリスクの程度を理解し、さまざまなリスク要因を確かめたうえで使うことを求めています(総務省:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(PDF)、2026-10-03 確認)。入れる前に、次の7つを決めておきます。
| 決めること | 決めないまま始めると |
|---|---|
| 1. よくある質問のページで足りないか | ページを整えれば済むことに、運用の手間を増やす |
| 2. 答えさせる範囲と、答えさせない範囲 | 決めていない約束や個別の判断を、AIが答えてしまう |
| 3. 読ませる資料 | 古い料金や終わったサービスを、今の案内として答える |
| 4. 間違えたときの考え方と確かめ方 | 誤った答えに、誰も気づかないまま広がる |
| 5. 人への引き継ぎ | 答えられない質問で、お客様が行き止まりになる |
| 6. 個人情報の扱いと、AIであることの表示 | 会話の記録の扱いを説明できず、お客様が不安になる |
| 7. 役に立っているかの測り方 | 入れたことに満足して、問い合わせが減ったのか増えたのか分からない |
1. よくある質問のページで足りないかを、先に考える
ホームページで聞かれる質問の多くは、答えが決まっています。営業時間、対応地域、申し込みの流れ。こうした質問なら、AIに毎回答えを組み立てさせるより、よくある質問のページに正しい答えを書いておくほうが確実です。書いた答えは毎回同じで、誤りがあっても直す場所が1か所です。
よくある質問のページは、ページとして公開されるので、検索やAIの答えの材料にもなります。チャットの会話は、多くの場合そうなりません。問いと答えの書き方は、よくある質問ページの作り方にまとめています。
よくある質問の答えを生成AIで下書きする場合も、確かめるのは人です。Googleは、生成AIでコンテンツを作るときは、正確性、品質、関連性を優先するよう案内し、使う人にとっての価値を加えないまま大量のページを作ると、大量生成されたコンテンツの不正使用に関するスパムポリシーに違反するおそれがあると説明しています(Google 検索セントラル:ウェブサイトで生成 AI によるコンテンツを使用するための Google 検索のガイダンス、2026-10-03 確認)。
AIのチャットを検討するのは、次のような場合です。
| 状況 | よくある質問のページで足りやすい | AIのチャットを検討する |
|---|---|---|
| 質問の種類 | 毎回ほぼ同じ質問で、数が限られている | 言い回しも内容もばらばらで、ページで探しにくい |
| 案内する情報の量 | 数ページに収まる | 商品やサービス、手続きの説明が多く、どこに書いてあるか探しにくい |
| 問い合わせの時間帯 | 営業時間内に返事ができれば困らない | 営業時間外の質問が多く、翌日の返事では離れてしまう |
| 答えを直す人 | ページを直す担当者がいる | 資料を直す担当者と、会話の記録を見る担当者を置ける |
右側に当てはまっても、よくある質問のページは先に整えておきます。AIのチャットに読ませる資料としても、そのまま使えるからです。
2. 答えさせる範囲と、答えさせない範囲を決める
AIのチャットに何でも答えさせると、会社として決めていないことまで答えてしまいます。入れる前に、質問を3つに分けておきます。
- AIが答える質問。 ホームページや案内の資料に答えが書いてあり、誰が聞いても答えが変わらない質問
- AIが答えず、人に回す質問。 見積もり、契約や解約の条件、返金、苦情、個別の事情の相談
- すぐに人が対応する質問。 急ぎの連絡、トラブル、安全に関わること
2つ目と3つ目は、「答えられません」で終わらせず、どこに連絡すればよいかを示します。チャットに置く案内の文も、このときに決めておきます。
価格を答えさせるかどうかは、慎重に決めます。ページに書いてある料金表を案内するだけなら答えられますが、「この条件ならいくらか」に答えさせると、それは見積もりです。見積もりや提案書の文章をAIで下書きするときに人が確かめることは、生成AIで見積書・提案書・メールの下書きを作るときに整理しています。
3. 読ませる資料を決め、正本をそろえる
生成AIのチャットの多くは、指定したホームページや、置いた資料をもとに答えます。たとえば Microsoft の Copilot Studio は、公開しているウェブサイトや、アップロードした文書などを知識源として追加し、それをもとに答えを組み立てる仕組みを説明しています(Microsoft Learn:知識源の概要(Copilot Studio)、2026-10-03 確認)。
つまり、答えの正しさは、読ませた資料の正しさで決まります。AI事業者ガイドラインも、AIを使う事業者に、正確性と、必要な場合には最新性が担保されたデータを入れることを求めています。
- ホームページを先に直す。 古い料金、終わったキャンペーン、今はない商品のページが残っていないか
- 読ませるページを選ぶ。 サイト全体ではなく、案内に使うページと資料に絞る
- 社内向けの資料を混ぜない。 原価、社内の手順、取引先の情報は、外向けのチャットに読ませない
- 直す人と日付を決める。 料金やサービスを変えたら、ページと資料を誰がいつ直すか
社内向けの資料にAIで答えさせる仕組みと、外のお客様に答えさせる仕組みは、読ませてよい資料がまったく違います。社内向けの仕組みの決め方は、社内のマニュアルや規程にAIで答えさせる仕組みにまとめています。
4. 間違えたときの考え方と、確かめ方を決める
お客様から見れば、チャットの答えも、会社のホームページに書いてある案内と同じです。「AIが答えたことなので」と後から説明しても、受け取る側の印象は変わりません。だからこそ、間違いをなくす工夫と、間違えたときの対応の両方を決めておきます。
資料にないことを、答えさせない設定を確かめる
サービスによっては、読ませた資料にもとづかない答えを出さないようにする設定があります。たとえば Copilot Studio には、知識源やツールを使わずにモデルの一般的な知識だけで答えた応答を止める設定があります。ただし Microsoft は、この設定をオフにしても、エージェントが一般的な知識を一切使わないことを保証するものではないと書いています。同じページで、回答は慎重に検討し、適切な場合には確かめるべきだと利用者に伝えることが重要だとも説明しています。
設定は、使うサービスの公式の説明で確かめます。そのうえで、設定だけに頼らず、次の確かめ方を用意します。
公開する前に、質問の組で試す
公開する前に、実際の問い合わせから質問を集め、正しい答えを書いた組を作って試します。
| 質問の種類 | 例 | 期待する動き |
|---|---|---|
| ページに答えがある | 土曜日は営業していますか | 正しい答えと、書いてあるページを示す |
| ページに答えがない | 案内していないサービスについて聞く | 「分かりません」と答え、問い合わせ先を示す |
| 答えさせない質問 | この条件だといくらになりますか | 答えず、見積もりの依頼先を示す |
| 人を呼んでほしい | 担当の人と話したい | すぐに問い合わせフォームと電話番号を示す |
| 急ぎ・苦情 | 届いた商品が壊れていた | 謝ったうえで、すぐに人の連絡先を示す |
公開した後も、会話の記録を決まった間隔で読み、誤った答えを見つけたら、資料を直すのか、答えさせない範囲に入れるのかを決めます。料金やサービスを変えたときは、同じ質問の組で試し直します。
チャットの答えには、どのページをもとにしたかを示す形にしておくと、お客様が元のページで確かめられ、担当者も誤りの原因を探しやすくなります。答えの最後に、問い合わせフォームへの道を必ず示しておくと、AIが答えきれなかったときにも、お客様が行き止まりになりません。
5. 人への引き継ぎを、フォームと電話につなぐ
AIのチャットを入れる目的は、問い合わせを減らすことではなく、お客様が早く答えにたどり着くことです。答えられない質問や、人と話したいお客様を、すぐに人へつなぐ道を作ります。
多くのチャットのサービスには、会話を人に引き継ぐ仕組みがあります。たとえば Copilot Studio では、お客様が会話のどの時点でも人の担当者を求められ、引き継ぐときに会話の履歴を担当者に渡せると説明しています。人の担当者につなぐ仕組みがなくても、人に回すときの案内に、サポートのウェブサイトへの URL や、メールなどで連絡する手順を入れられるとしています(Microsoft Learn:ライブエージェントに引き継ぐ(Copilot Studio)、2026-10-03 確認)。
中小企業では、チャットにずっと人が張り付くのは難しいことが多いはずです。その場合は、引き継ぎ先を問い合わせフォームと電話にします。決めておくのは次の点です。
- 引き継ぐ合図。 お客様が「人と話したい」と書いたとき、AIが答えられなかったとき、答えさせない質問だったとき
- つなぐ先。 問い合わせフォーム、電話番号、受付時間。営業時間外なら、いつ返事をするか
- 会話の中身を渡すか。 フォームに、チャットで聞いた内容を書き直させないで済む形にできるか
- フォームが動いているか。 引き継ぎ先のフォームが止まっていたら、チャットの案内も意味がなくなる
引き継ぎ先のフォームの見直し方は、問い合わせフォームを見直すチェックリストに、フォームが止まっていないかを見張る方法は、予約・問い合わせフォームが止まっていないか、見張る方法にまとめています。
AI事業者ガイドラインも、AIを使う事業者に、使うAIの性質に応じて、問い合わせに対応する窓口を合理的な範囲で設けることを挙げています。チャットの中に、人の窓口がどこかを示しておくことが、その第一歩です。
6. 個人情報の扱いと、AIであることの表示を決める
チャットで受け取る個人情報
チャットでは、お客様が名前や電話番号、相談の事情を書き込むことがあります。個人情報保護委員会のガイドライン(通則編)は、ユーザー入力画面への打ち込みなどで本人から直接個人情報を取得する場合は、あらかじめ本人に利用目的を明示しなければならないとしています(個人情報保護委員会:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)、2026-10-03 確認)。チャットで連絡先を聞くなら、何のために使うかを、聞く前に示します。
そもそも、チャットで個人情報を聞く必要があるかも考えます。連絡先が必要な相談は、利用目的を示した問い合わせフォームに回すほうが、扱いを整理しやすくなります。
会話の記録が、チャットのサービスを提供する会社でどう扱われるかも確かめます。個人情報保護委員会は、生成AIのサービスに個人データを含む指示を入力し、その個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合、個人情報保護法の規定に違反することになる可能性があるとして、サービスを提供する事業者がその個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう求めています(個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について、2026-10-03 確認)。
| 確かめること | 見る場所 |
|---|---|
| 会話の記録が、AIの学習に使われるか | サービスの利用規約、プライバシーの説明、契約 |
| 会話の記録が、どこに、いつまで残るか | サービスの管理画面、公式の説明 |
| 社内で、誰が会話の記録を見られるか | 管理画面の権限の設定 |
| 自社のプライバシーポリシーに、チャットの記録の扱いが書いてあるか | 自社のサイト |
社員が生成AIに入力してよい情報の決め方は、生成AIを社内で使うときのルールの作り方にまとめています。
AIが答えていることを、分かる形で示す
AI事業者ガイドラインは、AIを組み込んだサービスを提供する事業者に、AIを利用しているという事実、活用している範囲、適切な使い方と不適切な使い方などを、平易でアクセスしやすい形で伝えることを挙げています。同じガイドラインの別添は、問い合わせを通じたやり取りの例として、問い合わせ先を明記すること、システムにAIが使われていることをホームページなどの分かりやすい位置に明記することを挙げています(総務省:AI事業者ガイドライン(第1.2版)別添(PDF)、2026-10-03 確認)。
ホームページのチャットなら、たとえば次の3つを、会話の最初に示します。
- このチャットはAIが答えていること
- 答えが正しくないことがあり、大事なことは案内のページや担当者に確かめてほしいこと
- 人に相談したいときの、問い合わせフォームと電話番号
7. 役に立っているかを、測り方から決める
入れた後に「よく使われている」だけでは、役に立っているかは分かりません。入れる前に、何を数えるかを決め、入れる前の数字も控えておきます。
チャットのサービスの多くは、会話の結果を数える機能を持っています。たとえば Copilot Studio は、会話の結果を、解決済み、エスカレーション済み、放棄済みなどに分けて数え、回答できなかった質問の数や、利用者の満足度のアンケートの結果も確かめられると説明しています(Microsoft Learn:対話エージェントを監視する(Copilot Studio)、2026-10-03 確認)。
数える項目の例は次のとおりです。
| 数えること | 分かること |
|---|---|
| 答えられなかった質問と、その中身 | 資料に足りないこと。よくある質問のページに足す候補 |
| 人に引き継いだ数と、その理由 | 答えさせない範囲が合っているか、引き継ぎが早すぎないか |
| 会話の記録で見つかった誤った答え | 資料の直しが追いついているか |
| チャットの後に、フォームや電話で問い合わせた数 | チャットが問い合わせの手前で役に立っているか、邪魔になっていないか |
| 電話やメールで同じ質問を受けた数 | 担当者の手間が実際に減ったか |
会話の記録を読むと、お客様が実際に使う言葉が分かります。答えられなかった質問は、よくある質問のページや案内のページに足すと、チャットを使わないお客様の役にも立ちます。続けるか、範囲を変えるか、やめてよくある質問のページに戻すかは、決めた期間の数字で判断します。
私たちの考え方
私たちのサイトには、今のところチャットボットを置いていません。問い合わせはフォームで受け、よくある質問は、コラムの各記事の終わりに、その記事の内容について2〜3問ずつ置いています。
AIのチャットを入れるかどうかは、聞かれる質問の数と種類、営業時間の外の問い合わせの多さ、資料を直す人と会話の記録を読む人を置けるかで決まります。入れるにしても、入れないにしても、まず整えるのは、ホームページに書いてある案内とよくある質問の答えです。
私たちは大阪のグラングリーン大阪を拠点に、関西を中心に、全国のお客様とオンラインで進めています。AI導入支援では、対象の業務の整理から、小さな試作、出力の確認、ツールとの連携、社内のルールと定着までを段階に分けて進めます。ホームページの運用や問い合わせフォームとの連携も、同じ会社で検討できます。進め方は、AI導入支援・業務効率化のサービスにまとめています。
よくある質問
AIのチャットボットを入れれば、問い合わせの対応は減りますか?
AIのチャットが間違えた答えを出したら、どうすればいいですか?
チャットがAIであることは、書いておく必要がありますか?
まず、問い合わせの記録から質問を書き出す
AIのチャットを考え始めたら、サービスを比べる前に、問い合わせのメールや電話のメモから、よく聞かれる質問を書き出してみてください。ホームページに答えが書いてある質問、書いていない質問、人でなければ答えられない質問に分けると、よくある質問のページで足りるのか、AIのチャットが要るのかが見えてきます。
ご相談
AIの活用について、いまの状況をお聞かせください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。