この記事の結論
アンケートの自由記述、Googleの口コミ、問い合わせの履歴のように、文章で集まったお客様の声は、生成AIで分類しやすい材料です。進め方は5つの段階に分けます。まず、氏名や連絡先などを外し、1件ずつに番号を振る。次に、分類の項目を決めて、AIには1件ごとに分類だけをさせ、数えるのは表計算で行う。分類の結果は、人が抜き出して確かめる。見えてきたことは、よくある質問のページ、ホームページの案内、サービスの直しに分けて生かす。口コミへの返信をAIで下書きするときは、公開される文章として人が読み、口コミを集めるときは、Googleの決まりと消費者庁のステルスマーケティングの規制に沿って行います。
文章で集まった声は、読み切れないまま残りやすい
アンケートの最後の「ご意見・ご感想」の欄、Googleマップに書かれた口コミ、問い合わせフォームやメールで届いた相談。お客様の声は、数字ではなく文章で集まることが多く、件数が増えるほど、全部を読んで整理する時間は取りにくくなります。
生成AIは、こうした文章を、決めた項目に分けたり、似た内容をまとめたりする作業を手伝えます。ただし、お客様の声には、名前や連絡先、その人の事情が入っています。分析の結果も、会社の判断の材料になります。AIに渡す前の準備と、出てきた結果の確かめ方を、先に決めておきます。
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIを業務で使う側に、正確性と、必要な場合には最新性が担保されたデータを入力すること、AIの出力について精度とリスクの程度を理解し、さまざまなリスク要因を確かめたうえで使うこと、個人情報や機密情報を不適切に入力しないよう注意を払うことを求めています(総務省:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(PDF)、2026-10-03 確認)。この記事では、この考え方を、お客様の声の分析に当てはめて整理します。
AIで分析しやすい声、しにくい声
文章で集まった声は、AIで分類しやすいものと、人が読むほうがよいものに分かれます。
| 声の種類 | AIで分類しやすい理由 | 気をつけること |
|---|---|---|
| アンケートの自由記述 | 1件ずつが短く、同じ問いへの答えなので、項目を決めて分けやすい | 回答者の名前や、回答から本人が分かる書き込みが混ざっていないか |
| Googleの口コミ | 公開されている文章で、良かった点と困った点が書かれていることが多い | 投稿者の表示名は分析に要らない。1件だけの強い言葉に引っぱられない |
| 問い合わせの履歴 | 何を聞かれているかが分かり、よくある質問やホームページの直しにつながりやすい | 氏名、電話番号、メールアドレス、署名、相談の事情。もっとも個人情報が多い |
一方で、次のような声は、AIに分類させるより、人が1件ずつ読んで対応するほうが向いています。
- 苦情や事故の報告。 分類する前に、対応が要る声です
- 件数がごく少ない声。 10件ほどなら、人が読むほうが早く、取りこぼしもありません
- 健康やお金、家族の事情など、配慮が要る内容。 AIに渡すかどうかから考えます
問い合わせの履歴をAIで扱うなら、そもそも問い合わせフォームで何を聞いているかも見直しどきです。項目の決め方は、問い合わせフォームを見直すチェックリストにまとめています。
準備:個人情報を外し、1件ずつに番号を振る
外すもの、置き換えるもの
AIに渡す前に、分析に要らない情報を外します。お客様の声の分析で必要なのは、多くの場合、誰が書いたかではなく、何が書かれているかです。
| 外すもの | 例 | 置き換え方の例 |
|---|---|---|
| 名前 | 氏名、口コミの表示名、文中の「〇〇さん」 | 消す。文中の名前は「お客様」「担当者」に置き換える |
| 連絡先 | 電話番号、メールアドレス、住所 | 消す。地域が分析に要るなら、市の名前までにする |
| 署名 | メールの最後の会社名、部署、電話番号 | 署名の部分ごと消す |
| 番号 | 会員番号、注文番号、予約番号 | 消して、分析用の通し番号を振る |
| 本人が分かる事情 | 日時と場所と出来事が組み合わさって、誰のことか分かる書き込み | 日を月までにするなど、ぼかす |
個人情報保護委員会のガイドラインは、個人情報を加工するときの考え方として、氏名のようにそれだけで特定の個人が分かる記述のほか、住所や生年月日のように組み合わさると個人が分かる記述もあることを説明し、加工の例として、氏名を削除する、住所を県と市までに置き換える、生年月日を生年月に置き換えるといった措置を挙げています。氏名を消した後でも、ほかの記述で特定の個人が分かるなら、その記述も加工が要るとしています(個人情報保護委員会:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(仮名加工情報・匿名加工情報編)、2026-10-03 確認)。
自由記述は、項目が決まっていない分、思わぬところに名前や事情が書かれています。置き換えは、項目を消すだけでなく、文章の中身も読んで行います。
名前を消しても、個人情報でなくなるとは限らない
ここで1つ注意があります。同じガイドラインは、安全管理の一環として氏名などの一部を削除し、引き続き個人情報として扱う場合は、法律でいう「仮名加工情報」を作るときには当たらないと説明しています。また、元の個人情報などを持っていて、照らし合わせれば特定の個人が分かる状態なら、加工した情報も個人情報に当たるとしています。
社内の分析のために名前を外すのは、AIに渡す情報を減らすための工夫です。外した後のデータも、会社の中では個人情報として扱う前提で、使ってよいサービスと設定を決めておきます。法律上の加工の制度を使うかどうかは、別に確かめる話です。
使ってよいサービスと設定を、先に決める
個人情報保護委員会は、事業者が生成AIのサービスに個人情報を含む指示を入力する場合は、利用目的を達成するために必要な範囲内であることを十分に確かめるよう注意を呼びかけています。また、本人の同意なく個人データを含む指示を入力し、その個人データが応答の出力以外の目的で扱われる場合は、個人情報保護法の規定に違反することになる可能性があるとして、サービスを提供する事業者が、その個人データを機械学習に使わないことなどを十分に確かめるよう求めています(個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等(PDF)、2026-10-03 確認)。
名前を外したデータであっても、会社が使ってよいと決めたサービスと設定で扱います。サービスごとの入力内容の扱いの違いは、生成AIで見積書・提案書・メールの下書きを作るときに、社内のルールの作り方は、生成AIを社内で使うときのルールの作り方にまとめています。
頼み方:分類はAIに、数えるのは表計算で
分類の項目を、先に決める
「この口コミを分析して」とだけ頼むと、AIはそれらしい要約を返しますが、どの声をどこに入れたかが分からず、確かめようがありません。分類の項目は、人が先に決めます。
項目の例は次のとおりです。業種やサービスに合わせて、5〜10ほどに絞ります。
| 項目 | 入る声の例 |
|---|---|
| 料金・費用 | 分かりにくい、事前に知りたかった |
| 申し込み・予約の手続き | 手順が分からなかった、フォームが使いにくかった |
| 対応・説明 | 説明が丁寧だった、返事が遅かった |
| サービスの中身 | 良かった点、足りなかった点 |
| 場所・アクセス・時間 | 駐車場、営業時間、対応している地域 |
| その他 | どれにも入らない声 |
最初から項目を決められないときは、一部の声をAIに読ませて、項目の案を出させる方法もあります。ただし、その案を使うかどうかは人が決め、決めた項目で全件を分け直します。
AIには、1件ごとに分類だけをさせる
全件をまとめて渡して「何件あるか数えて」と頼むより、1件ごとに項目を付けさせ、数えるのは表計算で行うほうが、確かめやすくなります。
| 頼むときに入れること | 例 |
|---|---|
| 目的 | お客様の声を、決めた項目に分ける |
| 渡す材料 | 通し番号と本文だけ。名前や連絡先は外したもの |
| 条件 | 1件につき項目は1つ(多くても2つ)。どれにも入らなければ「その他」。本文にないことは書かない |
| 出力の形 | 通し番号、項目、判断の根拠になった本文の一部、の3列の表 |
「判断の根拠になった本文の一部」を出させておくと、なぜその項目に入れたのかを、元の声と照らして確かめられます。出てきた表を表計算に貼り、通し番号で元の声と並べてから、項目ごとの件数を数えます。
件数を、AIの文章のまま使わない
生成AIの応答には、不正確な内容が含まれることがあります。個人情報保護委員会の同じ注意喚起も、生成AIのサービスが出す文章は確率的な相関関係にもとづいて作られるため、不正確な内容が含まれるリスクがあると説明しています。
AIが「料金についての声が多い」とまとめても、それをそのまま報告の数字にはしません。件数は、AIが付けた項目を表計算で数え直したものを使います。渡した件数と、返ってきた表の行数が合っているかも、最初に確かめます。
確かめ方:人が抜き出して読む
AIの分類が合っているかは、人が一部を読んで確かめます。AI事業者ガイドラインは、人がAIの判断を過度に信頼してしまう「自動化バイアス」などのリスクに注意を払うことを求めています。結果の表がきれいに整っているほど、確かめる前に信じてしまいやすくなります。
| 確かめること | やり方 |
|---|---|
| 件数が合っているか | 渡した件数と、返ってきた表の行数を比べる。抜けや重なりがないか |
| 分類が合っているか | 項目ごとに何件か抜き出し、元の声と読み比べる |
| 根拠が本文にあるか | 「根拠になった本文の一部」が、元の声に本当に書かれているか |
| 「その他」に何が入ったか | 「その他」は全部読む。新しい項目が要る声が混ざっていることがある |
| 大事な声が埋もれていないか | 苦情、事故、安全に関わる声は、分類とは別に人が拾い出す |
確かめて誤りが多い項目があれば、項目の説明を書き足して、分け直します。最初の1回は手間がかかりますが、項目と頼み方が固まれば、次からは同じ型で進められます。
分析の結果を社内で共有するときは、件数の表と一緒に、項目ごとの代表的な声を2〜3件、元の文章のまま添えます。数字だけでは伝わらないお客様の言葉が伝わり、分類がずれていないかを、読む人も確かめられます。
生かし方:よくある質問、ホームページ、サービスの直しに分ける
分析は、何かを変えるところまで進めて初めて役に立ちます。見えてきたことを、次の3つに分けて担当者を決めます。
| 見えてきたこと | 生かす先 | 例 |
|---|---|---|
| 同じことを何度も聞かれている | よくある質問のページ | 申し込みの流れ、用意するもの、対応している地域の答えを書く |
| 案内が伝わっていない、探しても見つからない | ホームページの案内 | 料金の考え方、アクセス、営業時間を、見つけやすい場所に書く |
| サービスそのものへの不満や要望 | サービスや手順の直し | 返事の早さ、説明の順番、手続きの手間を見直す |
問い合わせの履歴から見えた質問は、よくある質問のページの材料になります。問いと答えの書き方は、よくある質問ページの作り方にまとめています。
よくある質問のページに書く答えをAIで下書きするときも、確かめるのは人です。お客様の声に書かれた言葉は、お客様が実際に使う言葉なので、ページの見出しや問いの言い回しに生かせます。ただし、口コミの文章をそのままページに貼り付けるのではなく、自社の言葉で答えを書きます。
ホームページに置くAIのチャットで同じ質問に答えさせることを考える場合は、その前に決めておくことを、ホームページの問い合わせにAIチャットボットを入れる前に決めておく7つのことに整理しています。
口コミへの返信をAIで下書きするとき
口コミを分析すると、返信もAIで下書きしたくなります。下書きを手伝わせるのはよいとして、返信は公開される文章です。
Googleが案内している返信の考え方
Googleのヘルプは、クチコミへの返信は一般公開されるとしたうえで、返信をわかりやすく、有益で、礼儀正しいものにすること、簡潔にすること、返信もGoogleのポリシーに準拠している必要があることを案内しています。すべてのクチコミに感謝を公開する必要はないとも書いています。否定的なクチコミに返信するときは、投稿者の個人情報を公開したり、個人的に攻撃したりしないこと、問題の解決のためにメールや電話で直接連絡してもらうようお願いすること、起きたミスには誠意をもって対応し、非がないことについては責任を負うことを避けて、対応できることとできないことを説明することを挙げています(Googleビジネスプロフィール ヘルプ:クチコミを増やすためのヒント、2026-10-03 確認)。
返信は、投稿後にGoogleがコンテンツのポリシーに沿っているかを審査し、承認されると口コミの下に公開されます。返信が公開されると投稿者に通知が届き、投稿者は返信を読んだ後でも口コミを変更できると説明されています(Googleビジネスプロフィール ヘルプ:ユーザーからのクチコミを管理する、2026-10-03 確認)。
AIの下書きで、人が確かめること
| 確かめること | 起こりうること |
|---|---|
| 個人情報が入っていないか | 社内の記録を材料に渡したため、来店日や相談の中身など、投稿者が分かる内容が書かれる |
| 約束していないことが書かれていないか | 「次回は割引します」「必ず改善します」など、決めていない約束や、インセンティブと受け取られかねない文 |
| 事実と合っているか | 確かめていない原因の説明や、渡していない事情が書き足される |
| 言い回しが同じになっていないか | どの口コミにも同じ文が並び、読む人に定型の返事だと伝わる |
| 責任の範囲 | 非がないことまで謝ってしまう、反対に起きたミスを認めない |
返信の下書きに渡すのは、口コミの本文と、返信で伝えてよいことだけにします。社内の顧客の記録は渡しません。
口コミを集めるときに、してはいけないこと
分析を続けるうちに、口コミの数を増やしたい、評価を上げたいと考えることもあるはずです。ここには、Googleの決まりと法律の両方があります。
Googleの決まり
Googleマップのポリシーは、投稿は実体験にもとづいている必要があるとし、次のようなことを禁止しています(Googleマップ:禁止または制限されているコンテンツ、2026-10-03 確認)。
- 実体験にもとづいていないコンテンツの投稿を募ったり促したりすること
- 口コミの投稿や、否定的な口コミの修正や削除と引き換えに、金銭的な報酬、割引、無料の商品やサービスなどのインセンティブを提供すること
- 否定的な口コミの投稿を妨げたり、肯定的な口コミを選んで募ったりすること
- 口コミを頼むときに、その場で評価や口コミを書くよう求めたり強要したりすること、特定の内容を含めるよう頼むこと
- 現在や過去の雇用関係など、利益相反にもとづくコンテンツ(削除の対象とされています)
一方で、インセンティブを出さず、評価や内容に影響を与えようとせずに、実体験にもとづく投稿を募ることは許可されています。Googleのヘルプも、口コミを投稿してもらうために、リンクやQRコードを案内できると説明しています。
生成AIで「お客様の口コミの文例」を作って渡すことは、特定の内容を含めるよう頼むことに当たりかねません。口コミは、お客様自身の言葉で書いてもらうものです。
消費者庁のステルスマーケティングの規制
消費者庁は、令和5年10月1日から、広告であるにもかかわらず広告であることを隠す、いわゆるステルスマーケティングが景品表示法の違反になったと案内しています。規制の対象は、商品やサービスを供給する事業者で、SNSの投稿やレビューの投稿などインターネット上の表示も対象です(消費者庁:令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります。、2026-10-03 確認)。
運用基準では、事業者の表示に当たる例として、事業者が第三者に、その人のSNSや口コミサイトなどに自社の商品やサービスについての表示をさせる場合を挙げています。また、販売を促進する立場にある社員(販売や開発に関わる役員、管理職、担当チームの一員など)が、販売を促進するために行った表示も、事業者の表示に含まれうるとしています(消費者庁:「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」の運用基準(PDF)、2026-10-03 確認)。
社員や知り合いに頼んで口コミを書いてもらう、AIで作った文章を口コミとして投稿する、といったことはしません。口コミの分析は、お客様が自分の意思で書いた声だからこそ意味があります。
私たちの進め方
お客様の声の分析は、AIの使い方より、準備と確かめ方の決まりで結果が変わります。私たちがお手伝いするときも、まず、どの声を、どこまで外して、どのサービスに渡すかを決め、少ない件数で項目と頼み方を試してから、全件に広げる順番で進めます。
私たちは大阪のグラングリーン大阪を拠点に、関西を中心に、全国のお客様とオンラインで進めています。AI導入支援では、対象の業務の整理から、小さな試作、出力の確認、ツールとの連携、社内のルールと定着までを段階に分けて進めます。分析で見えたことをもとにした、よくある質問のページやホームページの直し、問い合わせフォームの見直しも、同じ会社で検討できます。進め方は、AI導入支援・業務効率化のサービスにまとめています。
よくある質問
お客様の声を、そのまま生成AIに貼り付けて分析してもいいですか?
AIが出した「〇件」という集計は、信じていいですか?
口コミへの返信を、AIに書かせてもいいですか?
まず、声を50件だけ書き出してみる
始めるなら、最近のアンケートの自由記述か、問い合わせのメールを50件ほど選び、名前や連絡先を外して、通し番号を振ってみてください。項目を5つほど決めて、AIに1件ずつ分けさせ、表計算で数え、何件か読み比べる。1回やってみると、どこを外せばよいか、どの項目が分けにくいかが分かり、全件に広げるときの手順が決まります。
ご相談
AIの活用について、いまの状況をお聞かせください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。