この記事の結論
AI導入を外部に相談するとき、最初の打ち合わせまでに用意しておくと話が早いのは、試したい業務を1つと今かかっている手間の記録、その業務の書類やデータの見本(名前や連絡先、取引先名を消したもの)、いま使っているツールと契約しているプランの一覧、社内で決める人とAIの利用の決まりの4つです。
反対に、お客様の個人データそのもの、取引先と秘密保持を約束して預かった資料、パスワードやシステムの鍵は、最初の打ち合わせでは見せません。
最初の打ち合わせで決めるのは「どの業務で試すか」と「どこまでの情報を見せてよいか」で、本物の資料が要る段階に進むなら、見せる前に秘密保持の契約を結び、預けた情報の扱い方と消し方を確かめます。
最初の打ち合わせで決めるのは、試す業務と見せてよい範囲
AI導入を外に相談しようと思っても、何を持っていけばいいのかが分からず、問い合わせの手前で止まってしまうことがあります。
資料がそろっていないと相談してはいけない、ということはありません。
ただ、最初の打ち合わせで決めたいことが分かっていると、用意するものも絞れます。
最初の打ち合わせで決めたいのは、2つだけです。
1つは、どの業務でAIを試すか。
もう1つは、その業務の資料やデータを、外部の相手にどこまで見せてよいか、です。
前者が決まらないと話が広がり、後者が決まらないと、試すための材料が手元に届きません。
支援会社にどんなことを伝えるかは、AI導入支援の選び方に6つの項目のメモとしてまとめました。
この記事は、その次の段階の話です。
メモで伝える中身ではなく、打ち合わせの場に実際に持っていくもの、見せるものを決めます。
用意するもの1:試したい業務を1つと、今の手間の記録
候補の業務は、たくさん挙げるより、1つに絞って持っていくほうが話が進みます。
選ぶときの4つの基準(よく発生する、手順が決まっている、結果を人がすぐ確かめられる、間違えたときの影響が小さい)は、AIで業務効率化するなら、何から任せるかに書きました。
決めた業務について、1週間だけ、1回あたり何分かかったかと、週に何回あったかを書き留めておきます。
正確でなくて構いません。
「見積書の下書きに1件30分、週に10件くらい」といった程度の記録でも、AIで試す価値がありそうか、どこに時間がかかっているのかを、その場で一緒に見られます。
この記録は、試した後に「本当に手間が減ったか」を比べるときの基準にもなります。
用意するもの2:業務の見本は、消してから持っていく
相談を受けるとき、私たちが最初に知りたいのは、その業務で扱っている書類やデータの「形」です。
どんな項目が並んでいて、何件くらいあり、どの書式で、どこからどこへ渡っているのか。
中身の名前や数字そのものは、最初の打ち合わせでは要りません。
そこで、実物を1〜2件選び、次のものを消すか、架空のものに置き換えてから持っていきます。
- お客様や社員の名前、住所、電話番号、メールアドレス
- 取引先の会社名と担当者名
- 社外に出していない金額や、契約の条件
- 案件や人を特定できる番号(顧客番号、注文番号など)
表計算のデータなら、列の名前と1〜2行の架空の例があれば十分です。
紙の書類なら、項目の欄だけが見える状態で写真を撮っておきます。
個人情報保護委員会のガイドラインは、個人データの扱いを外部に委託する場合に、委託する業務に必要のない個人データを渡さないことは「当然」としています(個人情報保護委員会:個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編) 3-4-4 委託先の監督、2026-10-06 確認)。
相談の段階では、まだ何の業務も頼んでいません。
私は、この段階で外部に見せるのは、個人を消した見本で足りると考えています。
用意するもの3:いま使っているツールと、契約しているプラン
次に、その業務で使っているツールを一覧にします。
表計算、会計や販売の業務システム、チャット、メール、そしてすでに社員が使っているAIのサービスです。
AIのサービスは、名前だけでなく、無料のプランか、会社で契約したプランかまで書いておきます。
同じサービスでも、プランによって入力した内容の扱いが変わることがあるからです。
ChatGPTでの違いは、ChatGPTの情報漏洩対策にプラン別にまとめました。
経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(2025年2月)は、AIのサービスや開発を外部に頼むときの契約を、既存のAIサービスを使う「利用型」と、何らかの開発を伴う「開発型」に分けて、確かめる点を整理しています(経済産業省:AIの利用・開発に関する契約チェックリスト(PDF) 9ページ、2026-10-06 確認)。
同じチェックリストは、入力した情報が、ほかの利用者にも使われるAIの改良のために学習に使われるのか、自社へのサービスに必要な範囲でだけ学習に使われるのか、学習には使われないのかで、リスクの範囲が違うとしています。
どの場合に当たるかで、渡す情報の範囲を考えるよう書かれています。
いま使っているツールの一覧があると、新しく何かを契約しなくても、手元のツールで試せるかどうかを最初に確かめられます。
作るか、既製のサービスで足りるかの判断も、ここから始まります。
用意するもの4:決める人と、AIを使うときの社内の決まり
最後に、社内のことを2つ書いておきます。
1つは、AIを使うかどうかを社内で誰が決めるか、いつごろまでに決めたいか。
もう1つは、AIを使うときの社内の決まりがあるかどうかです。
決まりがなくても、相談はできます。
その場合は「まだない」と書いておけば十分です。
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」は、AIを業務で使う側の事業者が気をつける点として、個人情報や機密情報をAIのサービスに不適切に入力しないよう注意を払うことを挙げています(総務省:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(PDF) 第5部、2026-10-06 確認)。
何を入れてよいかが社内で決まっていないなら、試す業務と合わせて、その決め方も最初の相談の話題に入れます。
最初に決める5つのことは、生成AIを社内で使うときのルールの作り方に書きました。
打ち合わせに出る人も考えておきます。
決める人だけでなく、その業務を実際にしている人が1人いると、手順の細かいところがその場で分かります。
見せない資料と、秘密保持の契約を結ぶ時期
ここまでの4つを、最初の打ち合わせで見せるもの、まだ見せないものに分けると、次のようになります。
| 資料 | 最初の打ち合わせ | 本物の資料で試す段階 |
|---|---|---|
| 業務の流れと、今の手間の記録 | 見せる | 見せる |
| 名前や取引先名を消した見本 | 見せる | 見せる |
| ツールと契約プランの一覧 | 見せる | 見せる |
| お客様や社員の個人データそのもの | 見せない | 秘密保持の契約と、扱い方の取り決めを確かめてから |
| 取引先と秘密保持を約束して預かった資料 | 見せない | その取引先との契約で、外部に見せてよいかを確かめてから |
| パスワード、システムの鍵、管理画面への入り方 | 見せない | 渡さずに済む方法を先に相談する |
本物の資料を使って試す段階に進むなら、私は、見せる前に秘密保持の契約を結ぶのが順番だと考えています。
AIのサービスや開発を頼む相手との契約について、先ほどの経済産業省のチェックリストは、他者との契約に触れるおそれのある情報や自社の秘密情報を渡すときは、渡してよいかを慎重に検討すること、渡す前に、その情報が契約で扱いの決まった情報の定義に当てはまるかを確かめることを挙げています。
預けた情報をいつまで保管するか、こちらが求めたときや契約が終わったときに消してもらえるかも、確かめる点に入っています。
本物のデータをAIのサービスに入れて試すときは、そのサービスの扱いも確かめます。
個人データを入れるなら、あらかじめ本人の同意を得ていない限り、入力した事業者の側が個人情報保護法に違反するおそれがある、と個人情報保護委員会は注意を呼びかけています。
サービスがその個人データを応答の出力以外に使う場合の話で、学習に使わないことなどを入力の前に確かめるよう求めています(個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等、2023年6月2日公表、2026-10-06 確認)。
最初の打ち合わせまでの準備の点検表
ここまでを、打ち合わせの前に見直せる形にまとめます。
全部がそろっていなくても構いません。
埋まらなかった項目は、そのまま「まだ決まっていない」と伝えてください。
- 試したい業務を1つに絞った
- その業務の1回あたりの時間と、週の回数を、1週間書き留めた
- 業務の見本を1〜2件選び、名前・連絡先・取引先名・番号を消すか架空のものにした
- 業務で使っているツールと、AIのサービスの契約プランを一覧にした
- 社内でAIを使うときの決まりがあるか(ないなら「ない」)を確かめた
- 社内で決める人と、決めたい時期を書いた
- 打ち合わせに、その業務を実際にしている人が出られるかを確かめた
- 見せない資料(個人データ、預かった資料、パスワードや鍵)を分けておいた
私たちがAI導入の支援でどんな段階を受け持つかは、AI導入支援・業務効率化のサービスに、対象業務の整理から小さな試作、業務の流れへの組み込み、社内の決まりづくりまでの順でまとめています。
点検表のうち、どの項目が埋まっていれば相談しやすいかの目安にもなるはずです。
私たちも、AIに鍵を見せずに数字を取らせている
表の最後の行に「渡さずに済む方法を先に相談する」と書いたのは、自社でも同じ線を引いているからです。
このサイトでは、Search Consoleの検索の数字を、AIエージェントにプログラムを動かさせて取っています。
2026年10月3日にその仕組みを作ったとき、接続に使う鍵はサイトの原稿と同じ場所には置かず、別の場所にあるファイルからプログラムが読み込む形にしました。
AIへの作業の手順書にも、鍵を画面に出さないと書いています。
仕組みの上では、AIが扱うのは取ってきた数字だけで、鍵は原稿の変更履歴にも残りません。
外部の支援会社に頼むときも、考え方は同じです。
管理画面に入ってもらう必要があるなら、自社のアカウントを貸すのではなく、相手用の権限を分けて渡せないか、そもそも入らずに済む方法がないかを、本物の資料を見せる前に相談してください。
AIに書かせた記事を人が確かめる手順は、AIで業務効率化するなら、何から任せるかの最後のほうに書きました。
よくある質問
何をしたいか決まっていなくても、AI導入の相談をしてよいですか?
最初の打ち合わせに、実際の顧客データを持っていくべきですか?
秘密保持の契約は、いつ結べばいいですか?
打ち合わせには、誰が出ればいいですか?
公的な相談窓口と、民間の支援会社のどちらに先に相談すればいいですか?
bundlyzeは、グラングリーン大阪(大阪市北区)を拠点に、大阪・兵庫を中心とした関西の会社に向けて、AIを日々の業務の流れに組み込む手伝いをしていて、最初の打ち合わせはWeb会議でも対面でもできます。
この記事を書いた津嘉山は、業務システム開発とAWSを専門とする技術責任者で、自社の記事づくりや検索の数字の集計にもAIを使っています。
公的な窓口から始める場合の大阪・兵庫の相談先は、大阪・兵庫のAI導入支援にまとめました。
まずは、試したい業務を1つ決めて、来週1週間、その業務に何分かかったかを書き留めてみてください。
ご相談
AIの活用について、いまの状況をお聞かせください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。