この記事の結論
システム開発でトラブルになったら、相談先を探す前に、契約書、見積書、要件をまとめた資料、打ち合わせの記録、メールやチャット、検収と支払いの書類を、日付の順に並べます。
そのうえで、相手には何をしてほしいのかを書面で伝えます。
それでも話がまとまらないとき、契約の読み方と法的な見通しは弁護士に聞きます。
中小企業なら日本弁護士連合会の「ひまわりほっとダイヤル」から面談を予約できます。
裁判の外で第三者を入れて話し合う場には、ソフトウェア紛争解決センター、大阪の民間総合調停センター、兵庫県弁護士会紛争解決センターがあります。
ただし、相手が応じなければ手続は進みません。
どこまで作れていて、何が原因なのかという技術の見立ては、別の開発会社に頼みます。
請負の契約で、できあがったものの種類や品質が契約に合わない場合、民法は、知った時から1年以内に相手へ知らせることを求めています。
相談先は、何を決めたいかで分かれる
「システム開発のトラブル」とひとくちに言っても、困っていることは会社ごとに違います。
納期を過ぎても終わらない。
追加の費用を求められた。
できあがったものが動かない、または頼んだものと違う。
担当者と連絡が取れなくなった。
どれも困りごとですが、相談先を選ぶときは、困りごとの種類より、何を決めたいのかで考えるほうが迷いません。
| 決めたいこと | 主な相談先 |
|---|---|
| 契約書のとおりなら、こちらは何を求められるか | 弁護士(ひまわりほっとダイヤルなど) |
| 裁判にせず、第三者を入れて話し合いたい | 裁判外の紛争解決の窓口(ADR) |
| どこまで作れていて、原因はどこにあるか | 別の開発会社(技術の見立て) |
| 作った会社と連絡が取れず、システムを止めたくない | 引き継ぎの手順(下の記事) |
いくつかが重なることもあります。
たとえば、不具合の原因が分からないまま弁護士に相談しても、どちらの責任かの話は先に進みにくいものです。
私は、技術の見立てと契約の見通しは、別々の人に聞いたほうがよいと考えています。
作った会社と連絡が取れなくなった場合は、相談より先に、動いているシステムを止めない手当てが要ります。
その手順はシステムを作った会社と連絡が取れないにまとめたので、そちらから読んでください。
相談の前に、記録を日付の順に並べる
どの窓口に行っても、最初に聞かれるのは「何を約束して、何が起きたか」です。
話の途中で記憶があいまいになると、相談の時間の多くが事実の確認で終わってしまいます。
次のものを、日付の順に一つのフォルダへ集めておきます。
- 契約書、発注書、見積書(変更のたびに出し直したものも全部)
- 要件定義書や仕様書など、何を作るかを書いた資料
- 打ち合わせの議事録と、メールやチャットのやり取り
- 検収の書類、請求書、支払った記録
- 納品されたもの、ソースコードやサーバーの置き場所と、そのログイン
特に大事なのは、途中で変わったことの記録です。
「この機能を足してほしい」「この画面は後回しでよい」といったやり取りは、口頭やチャットで済ませがちです。
後で費用や納期の話になったとき、いつ、誰が、何を変えると決めたのかが、争いの中心になりやすいからです。
要件をどう書き残しておくかは、要件定義とはに書きました。
私たちは、このサイトの変更を、gitという変更の記録にすべて残しています。
2026年5月23日の最初の記録から、2026年10月6日の時点で200件を超えていて、どれにも日付が、ほとんどに何を変えたかの一文が付いています。
記事を公開する前には、確認表を作って人が確かめてから出す決まりにしていて、その表も日付ごとのフォルダに残っています。
あとで「いつ、何を決めたか」をたどれるようにするためです。
開発を頼んだ会社にソースコードの変更の記録がある場合は、それも大事な材料になります。
不具合に気づいたら、まず書面で知らせる
納品されたシステムに不具合がある、頼んだものと違う、というときは、気づいた時点で相手に書面で知らせておきます。
話し合いの途中でも、期限の問題があるからです。
民法では、仕事の完成を約束する請負の契約で、できあがったものが種類や品質の面で契約の内容に合わないとき、頼んだ側が「その不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないとき」は、直してもらうこと、代金を減らすこと、損害の賠償、契約の解除を求められなくなる、と定めています(民法637条)。
相手が引き渡しの時に不適合を知っていた場合などには、この期限は当てはまりません。
民法は書面とまでは定めていませんが、後で確かめられるよう、知らせるのは書面にしておきます。
ただし、契約書で別の期間を決めていることもあります。
まず自社の契約書の条文を確かめ、分からなければ弁護士に読んでもらいます。
もう一つ確かめたいのが、契約の型です。
民法は、請負を「当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約する」契約としています(民法632条)。
一方で、作業そのものを頼む準委任の契約もあり、報酬を成果に対して払う形も民法に定めがあります(民法648条の2、656条)。
システム開発では、要件定義は準委任、作る工程は請負、と工程ごとに分けて契約することもあります。
下で紹介するIPAのモデル契約も、見直しの論点に「システム開発における複数契約の関係」を挙げています。
どの工程が、どの型の契約なのかで、相手に求められることが変わります。
条文はe-Gov法令検索で読めます(e-Gov法令検索:民法、2026-10-06 確認)。
相手との話し合いは、求めることを分けて書く
第三者に頼る前に、まずは相手と話します。
このとき、言いたいことを一通の長いメールにまとめるより、論点を分けて書いたほうが、返事も具体的になります。
まず、いつ、何が起きたかを、集めた記録に沿って書きます。
そのうえで、こちらが求めること、たとえば、いつまでに直してほしいのか、代金を見直してほしいのか、契約を終えたいのかを書き、返事の期限を添えます。
感情の言葉は、事実と分けておきます。
話し合いの前に読んでおくとよいのが、IPA(情報処理推進機構)の「情報システム・モデル取引・契約書」です。
IPAは第二版を2020年12月22日に公開し、2025年4月8日に更新しています。
頼む側の会社、作る側の会社、法律の専門家が加わって議論し、どちらか一方に有利に偏らない契約書を目指した、と説明されています。
見直しの論点には「プロジェクトマネジメント義務及び協力義務」も挙がっています(IPA:情報システム・モデル取引・契約書(第二版)、2026-10-06 確認)。
頼む側にも果たす役目がある、という考え方です。
自社が決めるべきことを決め、出すべき資料を出していたかも、話し合いの前に振り返っておくと、相手の言い分を予想しやすくなります。
第三者に入ってもらう窓口
話し合いで決まらないときに使える窓口を、何を頼めるかと一緒に並べます。
契約の見通しは、弁護士に聞く
日本弁護士連合会と各地の弁護士会は、中小企業と個人事業者向けに「ひまわりほっとダイヤル」を設けています。
0570-001-240に電話すると地域の弁護士会の窓口につながり、弁護士か弁護士事務所から折り返しの電話があって、面談の日を決めます。
面談は原則として有料ですが、一部の地域を除いて、初回の30分は無料です。
2026年10月6日に確かめた時点で、大阪と兵庫は、有料になる地域の一覧に入っていませんでした(日本弁護士連合会:ひまわりほっとダイヤル よくある質問、2026-10-06 確認)。
30分は短いので、上で並べた記録と、相手に何を求めたいかを1枚にまとめてから行きます。
裁判にせず話し合うなら、ADRの窓口
裁判外紛争解決手続(ADR)は、裁判所の外で、中立の第三者が間に入って話し合いを助ける手続です。
法務大臣の認証を受けた窓口は、法務省の「かいけつサポート」で探せます(2026-10-06 確認)。
システム開発で使えそうなのは、次の窓口です。
| 窓口 | 扱う紛争 | 場所と受付 |
|---|---|---|
| ソフトウェア紛争解決センター(一般財団法人ソフトウェア情報センター) | ソフトウェアの取引に起因する紛争、ソフトウェアの知的財産権に関する紛争など | 東京都港区。平日9時30分〜16時30分 |
| 民間総合調停センター(公益社団法人) | 民事に関する紛争 | 大阪市北区の大阪弁護士会館1階 |
| 兵庫県弁護士会紛争解決センター | 民事に関する紛争 | 神戸市中央区。平日10時〜17時。弁護士の紹介か代理が要る |
ソフトウェア紛争解決センターは、和解のあっせんをする人を、弁護士、弁理士、ソフトウェア開発の経験が10年以上の技術者などの中から選びます(法務省 かいけつサポート:一般財団法人ソフトウェア情報センター、2026-10-06 確認)。
技術の話が分かる人に入ってもらいたいときの候補になります。
大阪の民間総合調停センターは、大阪弁護士会のほか、司法書士会や税理士会などの士業の団体、大阪府、大阪市、堺市なども参加して運営しています(民間総合調停センター:参加団体一覧、2026-10-06 確認)。
申立書の書き方の助言を受けられる「申立補助制度」があり、Zoomでの相談もできると案内されています。
この制度では法律相談はできない、とも書かれています(民間総合調停センター:申立方法について、2026-10-06 確認)。
兵庫県弁護士会紛争解決センターは、民事に関する紛争を扱い、あっせん委員を複数選ぶときは、必ず1人以上を弁護士にするとしています。
必要なときは、専門知識を持つ専門委員を選ぶこともあります。
申し立てられるのは、兵庫県弁護士会の法律相談を受けて担当した弁護士の紹介がある場合や、弁護士が代理人として申し立てる場合などに限られています。
会社が直接、窓口に申し立てる形ではないので、先に弁護士に相談します(法務省 かいけつサポート:兵庫県弁護士会、2026-10-06 確認)。
気をつけたいのは、ここで挙げた3つの窓口は、相手が応じなければ始まらないことです。
ソフトウェア紛争解決センターは、申立てを受けると、相手に手続に応じるかどうかを確かめます。
民間総合調停センターも、相手に出てくるよう強制する力はなく、相手が応じないときや出てこないときは終わる、と書いています。
どちらも手続は非公開とされているので(民間総合調停センター:手続の流れ、2026-10-06 確認)、取引を続けたい相手と、外に話を広げずに決めたいときに向いています。
原因の見立ては、別の開発会社に頼む
弁護士もADRの窓口も、システムの中を開けて調べる役ではありません。
「どこまで作れているのか」「直すのにどれくらいかかりそうか」「設計に無理があるのか、単純な不具合なのか」は、別の開発会社にソースコードと動いている環境を見てもらって確かめます。
このとき、見てもらう会社に、何を決めるための見立てなのかを最初に伝えます。
今の会社に続けてもらう前提で原因を知りたいのか、引き継ぎ先を探しているのか、作り直すかどうかを決めたいのかで、見る範囲が変わるからです。
見立ての結果は、話し合いの材料にも、次の見積もりを比べる材料にもなります。
見積もりの読み方は業務システムの見積もりの読み方にまとめています。
次の契約で、同じことを起こさない
トラブルが片付いたら、次に頼むときの契約を見直します。
何を作るかを書面に残す。
途中で変えたことも、その都度書面に残す。
検収で何を確かめたら完了とするかを決める。
ソースコードやサーバーの名義は自社で持つ。
公開した後のことは、保守の契約で別に決めます。
確かめ方はシステムの保守契約で確かめることに書きました。
よくある質問
システム開発のトラブルは、どこに相談すればいいですか?
納品されたシステムに不具合があります。いつまでに言えばいいですか?
ADRを申し立てれば、相手と必ず話し合えますか?
中小企業が弁護士に相談するのに、どこから予約すればいいですか?
bundlyzeは、大阪市北区のグラングリーン大阪を拠点に、大阪・兵庫を中心とした関西の会社の業務システムの開発と、既存のシステムの改修や引き継ぎを受け持っていて、打ち合わせはWeb会議でも対面でもできます。
この記事を書いた津嘉山は、業務システム開発とAWSを専門とするエンジニアで、このサイトの変更の記録と公開前の確認の決まりも自分で運用しています。
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「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。