この記事の結論
AIで議事録を作るときに先に決めるのは、ツールより、会議の扱い方です。決めておくのは、今使っている会議ツールの機能で足りるか、録音や文字起こしを参加者にどう伝えるか、社外の人がいる会議でどうするか、録音と文字起こしと要約をどこに何日残すか、要約を誰がどこまで確かめるか、決定事項とやることをどう抜き出して確定させるか、の6つです。AIの要約は下書きとして扱い、決定事項と、やることの担当と期限は、会議の参加者が確かめてから共有します。
AIの議事録は、便利になるほど決めごとが要る
会議の音声を文字にし、要点をまとめ、やることを一覧にする。こうした機能は、すでに多くの会議ツールに入っています。議事録の下書きは、AIに任せやすい業務の代表です。AIが作ったものを、会議に出ていた人が読めば、正しいかどうかをすぐに確かめられるからです。
一方で、議事録には、ほかの業務にはない特徴があります。
- 素材が、参加者全員の発言である。自分の文章ではなく、ほかの人の声と言葉を扱う
- 社外の人が加わることがある。取引先の発言や、取引先から聞いた話も記録に入る
- 録音、文字起こし、要約と、記録が3つに増える。それぞれに保存先と、見られる人がある
- 要約の誤りに気づきにくい。読みやすい文章になっているぶん、言っていないことが書かれていても見落としやすい
総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン」も、AIを業務で使う側に、出力の精度とリスクの程度を理解したうえで使うこと、個人情報や機密情報を不適切に入力しないこと、関係する人から提供されるデータを使う予定があるときは、その人たちにあらかじめ情報を提供することを求めています(総務省:AI事業者ガイドライン(第1.2版)本編(PDF)、2026-10-02 確認)。会議の発言は、まさに参加者から提供されるデータです。
始める前に、次の6つを決めておきます。
| 決めること | 決めないまま始めると |
|---|---|
| 1. 今の会議ツールの機能で足りるか | 録音を別のアプリに取り込み、保存先と見られる人が把握できなくなる |
| 2. 録音と文字起こしを、参加者にどう伝えるか | 後から知った参加者が、発言を控えるようになる |
| 3. 社外の人がいる会議で、どうするか | 取引先の発言や資料の内容が、取引先の知らない形で残る |
| 4. 保存先と保存期間 | 録音と文字起こしが、誰でも検索できる場所に、いつまでも残る |
| 5. 要約を誰が、どこまで確かめるか | 言っていないことが書かれた議事録が、そのまま共有される |
| 6. 決定事項とやることを、どう確定させるか | 担当と期限があいまいなまま、やることが宙に浮く |
1. 今の会議ツールの機能で足りるかを、先に確かめる
AIで議事録を作るために、新しいサービスを契約する必要があるとは限りません。今使っている会議ツールに、文字起こしや要約の機能が入っていることが多いからです。
| ツール | 公式のヘルプで確かめられたこと |
|---|---|
| Microsoft Teams | 会議の文字起こしは、会議の開催者の OneDrive for Business に保存される。追加のライセンスがあれば、会議の後に AI のメモと、AI が勧めるタスクが「要約」の画面に出る |
| Google Meet | 文字起こしは、主催者の Google ドライブの「Google Meet」フォルダに保存される。「自動メモ生成」は、概要、決定事項、次のステップ、詳細に分けたメモを作る |
| Zoom | AI Companion の会議の要約は、主催者と共同主催者が開始と停止をでき、主催者が選べば、会議の後に参加者へ要約が届く |
出典:Microsoft サポート:Teams 会議のライブ トランスクリプト、Microsoft Learn:Teams の通話、会議、イベントのためのインテリジェント要約、Google Meet ヘルプ:文字起こしを使用する、Google Meet ヘルプ:自動メモ生成、Zoom サポート:Using Meeting Summary with AI Companion(いずれも 2026-10-02 確認)。使える機能は、契約しているプランや提供の状況で変わります。自社の契約で使えるかは、公式で最新を確認してください。
会議ツールの中の機能を使う利点は、記録が、今の会社のアカウントと保存場所の管理の中に残ることです。録音のファイルを、別の文字起こしのアプリやAIのサービスに取り込む形にすると、保存先、見られる人、入力した内容の扱いを、そのサービスごとに確かめ直す必要があります。個人情報保護委員会も、個人データを含む内容を生成AIのサービスに入力する場合は、そのサービスの事業者が機械学習に使わないことなどを十分に確認するよう注意を呼びかけています(個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について、2026-10-02 確認)。
会議ツールの機能で足りないと感じるのは、たとえば、決まった書式の議事録にしたい、社内の業務システムやタスク管理に、やることを自動で登録したい、といった場合です。そのときも、まず会議ツールの機能で試し、何が足りないかがはっきりしてから、つなぐ仕組みを検討します。
2. 録音と文字起こしを、参加者にどう伝えるかを決める
法律で求められることと、会社として決めること
個人情報保護委員会は、通話の内容から特定の個人を識別できる場合は個人情報に当たり、事業者は利用目的を通知または公表する義務を負うが、録音していることを伝える義務までは負わない、と説明しています(個人情報保護委員会:Q&A 1-10、2026-10-02 確認)。
つまり、法律で求められるのは「何のために使うか」を通知または公表することです。ただ、伝える義務がないことと、伝えなくてよいことは別の話です。上で触れたAI事業者ガイドラインも、関係する人から提供されるデータを使う予定があるときは、あらかじめ情報を提供することを求めています。会社のルールとしては、毎回伝えると決めておくほうが、参加者との信頼を保てます。
ツールが表示する通知だけに頼らない
多くの会議ツールは、文字起こしや要約が動いていることを画面に表示します。Teams では、文字起こしが始まると参加者全員に通知されます。Google Meet では、文字起こしや自動メモ生成が動いている間、参加者全員の画面にアイコンが表示され、Google は自動メモ生成を使うことを全員に知らせるよう案内しています。Teams には、参加者が明示的に同意しないと録画や文字起こしの対象にならないようにする管理者向けの設定もあります(Microsoft Learn:会議とイベントの Teams レコーディング ポリシーを管理する、2026-10-02 確認)。
ただ、画面の小さなアイコンに、全員が気づくとは限りません。会議室の1台の端末に複数の人が集まって参加する場合や、電話で参加する人がいる場合は、全員が同じ画面を見ているとも限りません。伝え方は、次の3か所で決めておきます。
- 招待の文面。 「議事録の作成のため、文字起こしとAIの要約を使います」と書いておく
- 会議の冒頭。 進行役が一言伝え、記録してほしくない話があれば止めると添える
- 止める場面。 人事の話や、個人の事情に触れる話になったら、記録を止めてから話す
「録音していることを伝える義務まではない」という説明は、録音を隠してよいという意味ではありません。法律で求められるのは利用目的の通知または公表で、伝えるかどうかは会社が決めることです。議事録のAIは、参加者が安心して話せることが前提の仕組みなので、毎回伝える決まりにしておくのが確実です。
3. 社外の人がいる会議では、事前に了解を取る
取引先、お客様、採用の応募者など、社外の人が加わる会議では、社内の会議よりも一段慎重に決めます。
- 事前に了解を取る。 招待やメールの時点で、文字起こしとAIの要約を使うことと、使う目的を伝える。断られたら使わず、人がメモを取る
- 相手から預かった情報に気をつける。 秘密保持の契約を結んでいる相手の話は、記録や共有の範囲が契約に合っているかを確かめる
- 共有の範囲を選ぶ。 Google Meet の自動メモ生成では、メモを共有する相手を、組織外を含む招待者全員、組織内の招待者、主催者と共同主催者のみから選べる。Teams でも、外部の参加者は、録画が明示的に共有されている場合にだけ見られる
- 相手のAIが参加してくる場合も決めておく。 会議ツールによっては、ほかの会社の会議ツールの会議にもAIのアシスタントが参加し、文字起こしと要約を作れる。Zoom の AI Companion は、Google Meet と Microsoft Teams の会議に参加でき、参加者には会議の開始から3分後にチャットで知らせると案内している(Zoom サポート:Using AI Companion in third-party meetings、2026-10-02 確認)。自社が主催する会議に、知らないAIのアシスタントが入ってきたらどうするか(目的を聞く、退出してもらう)も決めておく
あわせて、そもそもAIの議事録を使わない会議を決めておくと、毎回迷いません。たとえば、人事の評価や処遇の話、採用の面接、取引の条件の交渉、相手の秘密の情報を扱う打ち合わせなどです。AI事業者ガイドラインは、AIの出力を特定の個人の評価の参考にする場合は、その本人にAIを使っていることを通知するよう求めています。発言の記録や要約を、社員の評価に使わないことも、ルールに書いておきます。
4. 録音、文字起こし、要約の保存先と保存期間を決める
AIで議事録を作ると、記録は3つに増えます。それぞれ、どこに残り、誰が見られ、いつ消すのかを決めます。
| 記録 | 残す期間の考え方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 録音・録画 | 議事録を確定させるまで。確定したら消す | 声と顔が残る。いちばん重い記録として扱う |
| 文字起こし | 議事録の確認が終わるまで。確認後は消すか、見られる人を絞る | 発言がそのまま残り、文字なので検索しやすい |
| 確定した議事録 | 会社の文書として、ほかの議事録と同じ期間 | 決定事項とやることを、人が確かめた後の版だけを残す |
会議ツールの機能を使う場合、記録は、主催者のクラウドの保存場所に残ることが多くあります。Teams では、録画は開催者の OneDrive か SharePoint に保存され、会議に招待された人には見る権限が与えられ、Microsoft 365 の検索の対象にもなります。AI のメモとタスクは、組織のポリシーに従って期限切れになると案内されています(Microsoft サポート:Microsoft Teams の要約、2026-10-02 確認)。つまり、何も決めなければ、主催者ごとのフォルダに記録がたまり、残る期間も会社のポリシー次第になります。
個人情報保護法は、個人データを利用する必要がなくなったときは、遅滞なく消去するよう努めなければならない、としています(e-Gov 法令検索:個人情報の保護に関する法律 第22条、2026-10-02 確認)。録音や文字起こしが法律上の個人データに当たるかは、記録の整理の仕方で変わりますが、議事録を確定させるための材料は、確定したら役目を終えると考えると、残す期間を決めやすくなります。
保存先については、次の点も決めておきます。
- 個人のスマートフォンや個人のアカウントに残さない。 録音のアプリを個人で入れて使うと、会社が記録の場所を把握できない
- 退職や異動のときに引き継ぐ。 主催者のフォルダに記録がある場合、その人の退職とともに見られなくなったり、逆に残り続けたりする
- 確定した議事録の置き場所を1つにする。 下書きと確定版が並んでいると、後で読む人が下書きを正しいものとして扱ってしまう
確定した議事録を、後からAIに読ませて社内の質問に答えさせる使い方もあります。その場合も、下書きや文字起こしではなく、確定版だけを読ませることが大切です。考え方は、社内のマニュアルや規程にAIで答えさせる仕組みにまとめています。
5. 要約は、会議に出ていた人が確かめる
AIの要約は、正しいとは限りません。Microsoft は、Teams の要約について、AIが作った内容の一部は不正確、不完全、または不適切な場合があると明記しています。Google も、自動メモ生成のメモは、不完全または不正確な場合があると案内しています。
確かめるのは、会議に出ていた人、できれば進行役です。会議に出ていない人には、要約が実際の話と合っているかを判断できません。会議の後、時間が空くほど記憶が薄れるので、その日のうちに確かめると決めておきます。
全部を同じ細かさで読む必要はありません。誤りが起きやすく、誤ったときの影響が大きい箇所を重点的に見ます。
| 重点的に見る箇所 | 起きやすい誤り |
|---|---|
| 数字、日付、期限 | 聞き間違い、別の話の数字が混ざる |
| 社名、人名、商品名、専門の用語 | 似た音の別の言葉に置き換わる |
| 誰の発言か | 話し手の取り違え。とくに、会議室で1台のマイクを使った場合 |
| 決まったのか、検討中なのか | 「検討しましょう」が「決定した」としてまとめられる |
| 否定や条件 | 「〜ならやる」「今回はやらない」の条件や否定が抜ける |
| 言っていないこと | 話の流れから、AIがもっともらしく補った文 |
迷う箇所は、要約ではなく文字起こしの元の発言に戻って確かめます。それでも分からなければ、発言した本人に聞きます。AIの要約を直した記録を残しておくと、どの種類の会議で、どんな誤りが多いかが分かり、ツールの使い方や会議の進め方を見直す材料になります。
社外に出す議事録や、取引先と共有する議事録は、社内向けよりも一段慎重に確かめます。AIが作った文章でも、それを共有したのは会社です。生成AIの答えの確かめ方を社内のルールにする方法は、生成AIを社内で使うときのルールの作り方にまとめています。
6. 決定事項とやることを、会議の中で確定させる
議事録でいちばん大事なのは、何が決まり、誰が何をいつまでにやるかです。会議ツールの多くは、ここを抜き出す機能も持っています。Google Meet の自動メモ生成は「決定事項」と「次のステップ」の項目を作り、Teams の要約には AI が勧めるタスクが出ます。Zoom も、会議の要約や文字起こしから、新しいタスクを提案する機能を案内しています(Zoom サポート:Using AI task creation and management with Zoom Tasks、2026-10-02 確認)。
ただ、AIが抜き出すのは「話に出たこと」です。担当や期限が会議の中で口にされていなければ、AIにも分かりません。AIが担当や期限を推測して埋めてしまうと、本人の知らないところで仕事が割り振られます。
おすすめなのは、議事録を次の3つの区分で整理することです。
| 区分 | 書くこと | 確かめ方 |
|---|---|---|
| 決定事項 | 何が、どの条件で決まったか | 会議の最後に、進行役が読み上げて確認する |
| 保留 | 決まらなかったこと、次に誰が何を持ち寄るか | 決定事項に混ざっていないかを見る |
| やること | 誰が、何を、いつまでに | 担当と期限が空欄のものは、その場で決める |
いちばん効くのは、会議の最後の数分を、この確認に使うことです。AIの下書きを画面に出し、決定事項とやることを参加者で確かめれば、会議の後で直す手間も、認識の違いも減ります。担当と期限が決まらなかったやることは、空欄のまま残し、AIに埋めさせません。
確定したやることを、タスク管理のツールに登録するところまで自動にする方法もあります。ただし、自動にするのは、決定事項とやることを人が確かめた後の版からにします。確かめる前の下書きから自動で登録すると、誤ったタスクが増えるだけになります。
秘密の情報は、会議で口にしない
bundlyzeでは、社内の業務の一部をAIとプログラムで自動化してきましたが、パスワードやシステムの鍵のような秘密の情報は、ソースコードやAIとのやり取りに書かず、決まった保管場所にだけ置く決まりにしています。
議事録のAIを使うなら、この決まりは会議にもそのまま当てはまります。会議でパスワードを読み上げたり、画面にログインの情報を映したりすると、それが文字起こしと要約に残り、共有された人全員が見られる記録になります。秘密の情報は、会議では「保管場所のどこにあるか」だけを伝え、中身は口にしない。これだけで、記録から漏れる経路を1つ減らせます。AIまわりの情報が漏れる経路は、ChatGPTの情報漏洩は、どこから起きるのかに整理しています。
私たちは大阪のグラングリーン大阪を拠点に、関西を中心に、全国のお客様とオンラインで進めています。AI導入支援では、対象の業務の整理から、小さな試作、出力の確認、ツールとの連携、社内のルールと定着までを段階に分けて進めます。会議ツールの機能で足りない部分があれば、タスク管理や業務システムへのつなぎ込みも同じ会社で受けられます。進め方は、AI導入支援・業務効率化のサービスにまとめています。どの業務からAIを試すかの選び方は、AIで業務効率化するなら、どの業務から始めるかにまとめています。
よくある質問
会議を録音することは、必ず参加者に伝えないといけませんか?
無料の文字起こしアプリや、個人のスマートフォンの録音を使ってもいいですか?
AIが議事録を作れば、人が議事録を書かなくてよくなりますか?
まず、次の社内会議で1つだけ試す
AIの議事録を始めるなら、社外の人がいない、定例の社内会議を1つ選んでください。招待の文面に文字起こしを使うことを書き、会議の冒頭で伝え、最後の数分で決定事項とやることを画面で確かめる。終わった後に、要約のどこを直したかを記録する。1回やってみると、自社の会議で決めておくべきことが、具体的に見えてきます。
ご相談
AIの活用について、いまの状況をお聞かせください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。