この記事の結論
生成AIの導入を外に頼むときの依頼先は、大きく、研修が中心の会社、AIのツールを売る会社、システム開発もできる会社、公的な窓口の4つに分かれます。どれが良いかではなく、自社が困っているのが「使える人がいない」のか、「使う道具が決まっていない」のか、「今の業務やシステムとつながっていない」のか、「何から始めるか分からない」のかで、合う依頼先が変わります。比べるときは、自社が担う役割、入力する情報の扱い、作ったものの持ち主、今の業務とのつなぎ方、人が確かめる場面、終わった後に自社に残るものの6つを並べて見ます。bundlyzeでは、大阪市北区のグラングリーン大阪を拠点に、大阪・兵庫を中心とした関西の会社からのご相談に対応していて、全国からオンラインでもご相談いただけます。
先に、自社が何に困っているのかを決める
「AIを導入したい」という相談の中身は、会社によってかなり違います。依頼先を比べる前に、自社の困りごとがどれに近いかを決めておくと、合わない依頼先に時間を使わずに済みます。
| 困っていること | よくある状態 | まず当たりたい依頼先 |
|---|---|---|
| 使える人がいない | AIのサービスは契約したが、一部の人しか使っていない | 研修が中心の会社 |
| 使う道具が決まっていない | やりたい業務は決まっているが、どのサービスを使うかで迷っている | ツールを売る会社(複数を比べる) |
| 今の業務やシステムとつながっていない | AIで作ったものを、手作業で別のシステムに写している | システム開発もできる会社 |
| 何から始めるか分からない | AIを使いたいが、どの業務に向くかも分からない | 公的な窓口 |
支援の中身を段階ごとに分けた見方や、頼む前に用意するメモは、AI導入支援とは。外に頼むと何をしてくれるのかにまとめています。この記事では、その先の「どの種類の依頼先を、何で比べて選ぶか」を書きます。
依頼先が変わると、自社の立場も変わる
依頼先の種類を比べる前に、知っておきたい考え方があります。総務省と経済産業省の「AI事業者ガイドライン(第1.2版)」(2026年3月31日公表)は、AIに関わる事業者を「AI開発者」「AI提供者」「AI利用者」の3つに分けています(経済産業省:AI事業者ガイドライン)。
| 立場 | ガイドラインでの役割(要約) | 中小企業の導入で当てはまる例 |
|---|---|---|
| AI開発者 | AIのモデルやシステムを作る | 大きなAIのモデルを作っている事業者 |
| AI提供者 | AIのシステムを、アプリや既存のシステム、業務の流れに組み込んで、AI利用者に提供する。ほかのシステムとの連携の実装や、運用の支えも担う | AIを組み込んだ仕組みを作って納める会社 |
| AI利用者 | 事業の中でAIのシステムやサービスを使う。AI提供者が意図した適正な使い方をする | AIを業務に使う、自社 |
ガイドラインは、1つの事業者が複数の立場を兼ねることもあると書いています。依頼先がAIのサービスをそのまま売るのか、AIを自社の業務に組み込んで納めるのかで、依頼先が担う役割と、自社に残る役割が変わります。
ガイドラインは、AI利用者が気をつけることとして、AI提供者が定めた使い方の範囲で使うこと、AIの出力の精度とリスクを理解したうえで使うこと、個人情報や機密の情報を不適切に入力しないことなどを挙げています。どの依頼先を選んでも、これは自社に残る役割です。依頼先には、この役割を果たせるように、使い方の範囲と注意点を説明してもらう必要があります。
契約の形も、3つに分かれる
経済産業省の「AIの利用・開発に関する契約チェックリスト」(令和7年2月)は、AIのサービスを使う契約を、次の3つの型に分けて整理しています(経済産業省:AIの利用・開発に関する契約チェックリスト(PDF))。
| チェックリストの型 | 中身(要約) | 主に当てはまる依頼先 |
|---|---|---|
| 汎用的AIサービス利用型 | 自社が、AIの事業者が広く提供しているサービスをそのまま使う | ツールを売る会社、研修が中心の会社 |
| カスタマイズ型 | 間に入る事業者が、広く提供されているAIのサービスに、自社向けの機能を組み合わせて提供する | システム開発もできる会社 |
| 新規開発型 | 自社が、AIの事業者と組んで独自のAIシステムを作って使う | システム開発もできる会社 |
カスタマイズ型では、間に入る事業者は、自社に対してはサービスの提供者ですが、元のAIのサービスに対しては利用者になる、とチェックリストは説明しています。つまり、自社が入力した情報は、間に入る会社を通って、元のAIのサービスにも渡ります。システム開発もできる会社に頼むときは、この流れを図で説明してもらうと、情報の扱いを確かめやすくなります。
4つの依頼先が向く場面と、確かめること
ここからは、依頼先の種類ごとに、向く場面と、確かめておきたいことを書きます。1つの会社が複数の種類を兼ねていることもあるので、会社の名前や肩書きより、提案の中身がどの種類に当たるかで見てください。
研修が中心の会社
社員向けの研修や、使い方の勉強会を中心に引き受ける会社です。
- 向く場面:AIのサービスはすでに契約していて、使える人を増やしたい。社内のルールはある、または一緒に作りたい
- 確かめること:研修の内容が、自社の業務の例で組まれるか。研修の後、実際の業務で使えているかを確かめる場があるか
- 合いにくい場面:AIで作ったものを、業務システムに自動で入れるところまでやりたい
研修で何から教えるかは、生成AIの社内研修は、何から教えるかにまとめています。研修の前に、入力してよい情報を決めておくことも大切です。
AIのツールを売る会社
特定のAIのサービスや、AIの機能が入った業務ソフトを販売し、初期の設定や使い方の説明をする会社です。
- 向く場面:やりたい業務がはっきりしていて、その業務向けの製品がある。設定を変えるだけで、業務に合わせられる
- 確かめること:ほかの製品と比べたうえでの提案か。入力した情報がどう扱われるか(AIの学習に使われるか)を、製品の契約や設定で示せるか
- 合いにくい場面:使う業務がまだ決まっていない。複数のツールや社内のシステムを、またいで使いたい
システム開発もできる会社
AIのサービスを、今の業務ソフトや表計算、社内のシステムとつなぎ、業務の流れに組み込む会社です。契約チェックリストでいうカスタマイズ型や新規開発型の仕事です。
- 向く場面:AIで作ったものを、手作業で別のシステムに写している。社内の資料や記録をAIに読ませて使いたい。既製の製品では、業務の流れに合わない
- 確かめること:作る前に、既製のサービスで足りるかを確かめるか。作った仕組みの設定や構成が、自社に説明されて残るか。運用を続ける費用と、誰が直すのか
- 合いにくい場面:使う人がまだ少なく、まず使い方を覚えたい段階
社内の資料をAIに読ませて答えさせる仕組みは、作る前に決めることが多くあります。社内のマニュアルや規程にAIで答えさせる仕組みを参考にしてください。
公的な窓口
国や府県、市が設けている、中小企業の相談窓口です。特定の会社の製品や開発を売る立場ではありません。たとえば、よろず支援拠点と生産性向上支援センターには、令和8年度から「AIアドバイザー」が置かれ、AIを使える業務の整理、導入に向けた社内文書やデータの準備、使えるサービスの検討を手伝っています(よろず支援拠点全国本部:よろず支援拠点・生産性向上支援センターとは)。中小機構のIT経営サポートセンターは、特定のITツールやベンダーに偏らない中立的な立場で、オンラインで相談に応じていて、無料・1回60分で何度でも使えると案内しています(中小機構:IT経営サポートセンター)。
- 向く場面:何から始めるか分からない。外の会社に頼むべきかどうか、まだ決められない。受け取った提案書を、利害のない人に見てほしい
- 確かめること:自社が対象になるか(所在地や業種で対象が決まる窓口がある)。どの段階まで手伝ってもらえるか
- 合いにくい場面:仕組みを作る作業や、毎日の運用そのものを任せたい
大阪府・兵庫県・神戸市などで、AIの相談に使える窓口と、その使う順番は、大阪・兵庫の中小企業が、AI導入で使える公的な相談先にまとめています(どれも2026年10月3日に確認した内容です)。
比べる基準は6つある
依頼先の種類が決まっても、同じ種類の中で、複数の会社から提案を受けることがあります。また、研修の会社と開発の会社のように、種類の違う提案を比べることもあります。そのときは、次の6つの基準で並べて比べます。
| 基準 | 確かめること | はっきりしない答えの例 |
|---|---|---|
| 自社が担う役割 | 依頼先がAIを売るだけか、組み込んで納めるか。自社に残る役割(使い方の範囲を守る、出力を確かめる)を説明するか | 「全部こちらでやるので大丈夫です」 |
| 入力する情報の扱い | 入力した情報が、どのサービスに渡り、AIの学習に使われるか。お客様の情報を入れてよいか | 「セキュリティは万全です」 |
| 作ったものの持ち主 | AIが作った文章や、作ってもらった仕組みや設定を、契約の後も自社で使えるか | 「契約書の通りです」だけ |
| 今の業務とのつなぎ方 | 今使っている表計算や業務ソフトと、どこまでつなぐか。つながない部分は、誰が手で受け渡すか | 「AIで全部自動になります」 |
| 人が確かめる場面 | AIの出力を、誰が、どの時点で確かめるか。間違えたときにどう直すか | 「AIは正確なので確認はいりません」 |
| 終わった後に自社に残るもの | 手順書、社内のルール、設定の説明、アカウントが、自社の名義で残るか | 「運用はずっとこちらで続けます」 |
どれか1つで決めるのではなく、自社にとって外せない基準を2つか3つ決め、そこで比べます。効果の測り方や費用の分け方など、ほかの基準はAI導入支援とは。外に頼むと何をしてくれるのかの「支援会社を選ぶ6つの基準」も合わせて見てください。
入力する情報は、依頼先の種類で確かめ方が変わる
6つの基準のうち、いちばん後から困りやすいのが、入力する情報の扱いです。個人情報保護委員会は、生成AIのサービスを使う事業者に向けて、2023年6月2日に注意喚起を出しています。個人情報を含む指示(プロンプト)を入力する場合は、その個人情報の利用目的の範囲内かを十分に確かめること。あらかじめ本人の同意を得ずに個人データを含む指示を入力し、そのデータが応答を出す以外の目的で扱われると、個人情報保護法に違反するおそれがあるため、サービスを提供する事業者がそのデータを機械学習に使わないことなどを十分に確かめること、と書かれています(個人情報保護委員会:生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について)。
ツールを売る会社なら、その製品の契約と設定で確かめます。システム開発もできる会社なら、間に入る会社と、その先のAIのサービスの両方で確かめます。契約チェックリストは、入力する情報について、相手が何に使えるか、管理や消去をどうするか、第三者に渡すかを、契約で確かめるよう整理しています。社内で入力してよい情報を決める方法は、生成AIを社内で使うときのルールの作り方にまとめています。
依頼先の種類を決めるとき、いちばん手がかりになるのは、「AIで作ったものを、そのあと誰が、どこに写しているか」です。人が手で写しているなら、その受け渡しが減らせるかが、依頼先を選ぶ物差しになります。研修でもツールでも開発でも、その受け渡しがどう変わるかを、提案ごとに聞いてみてください。
補助金を使うなら、依頼先の条件も変わる
AIのツールを入れる費用には、国の「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)が使える場合があります。公式サイトでは、対象になるITツールは事前に事務局の審査を受けて登録されたもので、申請する会社は、事務局に登録された「IT導入支援事業者」と組んで申請する必要があると説明しています(デジタル化・AI導入補助金:制度概要)。通常枠の公募要領には、交付が決まる前にITツールを契約や発注した場合は補助の対象にならないと書かれています(デジタル化・AI導入補助金:通常枠の公募要領(PDF))。
補助金を使いたい場合は、依頼先を選ぶ段階で、次の2つを確かめます。
- 依頼先が、IT導入支援事業者として登録されているか
- 提案されたITツールが、登録されているか(公式サイトのITツール検索で確かめられる)
補助金の対象は、登録されたITツールです。自社のためだけに作る仕組みが対象になるかどうかは、申請の前に、事務局の資料と依頼先に確かめてください。補助の割合、上限、締め切りは、枠と回ごとに変わります。
契約の前に聞いておきたい質問
打ち合わせで、次の質問をしておくと、依頼先の種類が違っても同じ表で比べられます。答えをメモして、6つの基準の表に並べてみてください。
- この提案で、御社が担うことと、私たちが担うことは何ですか
- 入力した情報は、どのサービスに渡りますか。AIの学習に使われますか
- お客様の情報を入力してよいですか。よくない場合、どう分けますか
- AIが作ったものや、作ってもらった仕組みは、契約の後も使えますか
- 今使っている表計算や業務ソフトと、どこまでつなぎますか
- AIの出力は、誰がどの時点で確かめる設計ですか
- 契約が終わったとき、手元に何が残りますか
- 私たちの業務なら、御社以外の種類の依頼先のほうが合う場面はありますか
最後の質問は、答え方に会社の考え方が出ます。「研修だけで足りるかもしれません」「まず公的な窓口で整理してからのほうがいいです」と言える会社は、自社に合うかどうかを一緒に考えてくれる相手です。
私たちの立ち位置と、向かない会社
最後に、私たちbundlyzeについても、この記事の分け方に沿って書いておきます。私たちは、4つの依頼先のうち、システム開発もできる会社に当たります。
強いと考えている場面
- 今の業務やシステムとつなぐ:AIのサービスを、今使っているツールや業務システムとつなぎ、手作業の受け渡しを減らす仕組みを作れます。作る前に、既製のサービスで足りるかを先に確かめます
- 自社での実践:私たち自身も、経理・勤怠・インフラなどの社内業務にAIを使っています。お客様に勧める使い方は、まず自社で試しています
- 技術の確かめ方:この記事を書いている技術責任者の津嘉山は、業務システム開発とAWSを専門とするエンジニアです。AWSの機械学習やAIに関する認定資格も持ち、システム開発と合わせて検討します
向いていないと考えている会社
- 社員向けの研修だけを、まとまった回数で頼みたい会社。研修を中心にしている会社のほうが合います
- 使う製品がすでに決まっていて、その初期設定だけを頼みたい会社。製品を売る会社や、販売元の窓口のほうが早く進みます
- AIの答えの正しさや最終的な判断を、人が確かめずにAIに任せたい会社
この基準で比べて、私たちが合わないと感じたら、ほかの種類の依頼先を選んでいただくのが正しい判断です。進め方は、AI導入支援・業務効率化のサービスにまとめています。
よくある質問
研修の会社と、開発の会社の両方に頼むべきですか?
大阪や兵庫の会社に頼んだほうがいいですか?
公的な窓口に相談してから、会社に頼んでもいいですか?
依頼先の種類を決めれば、提案を比べやすくなる
AIの導入で依頼先選びに迷う理由の多くは、研修、ツール、開発、相談と、中身の違う提案を同じように並べてしまうことです。先に自社の困りごとを決め、合う種類の依頼先を選び、6つの基準で比べれば、会社の規模や知名度に関係なく、自社に合う相手を選べます。
まずは、AIで作ったものを、いま誰がどこに写しているかを書き出してみてください。それが、どの種類の依頼先に相談するかを決める手がかりになります。
ご相談
AIの活用について、いまの状況をお聞かせください。
「何から手をつければいいか分からない」という段階からで構いません。返信は担当者が直接お送りします。